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明るいところで見たメルは、夜とはまた違った印象があった。 俺の顔にかかった髪を、耳にかければいい、なんて言いながら笑いかけてくれる。 俺を見て、可愛いと言ってくれる。 その声は、とても優しい。 こうしてみると、初めてメルを見た夜とは、随分印象が違う。 あの夜は、棘がある感じだった。 それだけ心に余裕の無い状態だったのだろう。 もう一つメルといて感じたことは、自分への好意を受け取るのが苦手だということだ。 綺麗だよ、 可愛いね、 素敵だよ、 そう言葉を口にすると、「そんなことないよ」と言葉がかえってくる。 ある夜、愛されかたが分からない、と言っていた。その言葉を表すように、好意的な反応に対して、否定的なものが多かった。 分からないなら、育てよう。 そう思いながら、俺は今日も自分がメルへ抱いている想いを口にする。 海に着いてからは、駐車場へ車を停め、砂浜を歩いて話をした。 「夏じゃないから、誰もいなくていいな…。風強ぇな…」 「うん、海が綺麗に見えるね。ほんとだ、風が強いね。メル、寒くない?こっちにおいで」 自分の方へと肩を抱き寄せ、手を握る。 「メルの手、冷たいね」 「まさやの手、ぬくぬくだな」 そう言って2人で笑った。 気のせいかメルの元気が無いように感じる。 「メル、海で何かあった?」 気になって聞いてみたが、 何もない、という返事が返ってきた。 「メル、おいで。こっちに来て一緒に夕日を眺めよう」 手を引き、砂浜へと降りる階段の所まで移動する。ここで夕日を眺めようと誘うと、メルは静かに隣りへ座った。 「今日もいい天気だから、あそこに夕日が沈んだら綺麗なんだろうな」 そう言って海の向こうを指刺すと、メルは浮かない声でポツリとつぶやいた。 「夕日…」 海に何か思い入れでもあるんだろうか。 「やっぱり、何かあるんじゃない?海…」 「うん…」 無理に聞き出すことも良くない。 身体も冷えてきただろうから、場所を移してゆっくり話そう。 「メル、大丈夫?ホテルいこうか?」 下から覗き込みながら言うと、「なに、…する…?」と、ぼんやりした声が返ってきた。 「眠たそうだね、ホテルで休もうか?」 頭を撫でながら話すと、「え、しないの…?」と、悲しそうな声が返ってきた。 たしかに、メルと会い始めたきっかけは、自分の欲の吐口にするためだった。 けれど、今はメルを見ていると、守りたい、支えたいという感情がわいてくる。 人を好きになるのは、こんなに心を動かされるのかと思う。 「ううん、メルとしたいよ。ホテルに行こうか」 宥めるように、大丈夫だよと優しく微笑むと、少し冷えた手を引いて車へ向かった。 ≪追記≫ +こころわけ *心海*+:(0) |