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アクルinあびす!8





『非常に不躾なお願いで申し訳ないのですが、クイーンには棲みかを移動していただきたいのです』


必要以上の警戒をしていなかった俺達に、ライガクイーンは歓迎こそなかったものの、攻撃や突き放すようなことはなかった。さすが魔物の女王と言うべきだろうか。
自己紹介と諸事情をさらりと説明し終えた後、単刀直入に物申す。苛立った様子で、クイーンは何故か問うた。


『私達はチーグルの味方をするわけではありません。むしろ貴女方一族を想ってのことです。チーグルは自分達の窃盗の罪を貴女方に擦り付け、あわよくば私達人間に討伐させようと目論んでいます。私達はそれを是としません』


クイーンは困惑するように呻く、俺は一度イオンの顔色を伺うとさらに続けた。


『――妖獣のアリエッタ』


びく、とクイーンが反応を示す。


『貴女の娘だと伺っております。このまま貴女が此処にいますと、そう遠くないうちに討伐隊が現れるでしょう。貴女がいなくなれば彼女は悲しみます』


クイーンの瞳が揺れた。


『そこにいるチーグルが申す所、この森を抜けた北にキノコロードという場所があるそうです。食料も魔物も豊富だと言っております』


どうか、そちらに移っていただけないでしょうか。貴女の娘のためにも。

見つめあった数秒が酷く長く感じた。クイーンは側にあった卵を慈しむように一舐めすると、すっと立ち上がった。


「"よかろう、そなた達と我が娘アリエッタに免じて、我は退こう。しかし忘れるでないぞ、我はチーグル一族を許したわけではない"…みゅうううごめんなさいですの」

「許さなくていいのです、チーグル達はそれだけのことをしました。原因のチーグルの仔は私達で預ります」

「"二度とこのようなことが起こらぬよう、精々チーグルの監視をしておくのだな"…ですの」


ふん、と皮肉った笑いを残しライガクイーンは一族を連れて颯爽と北へ駆けて行った。
最後に娘を頼むと言い残して。



(アリエッタ襲撃フラグをへし折りました)



「アクルかっけぇー…」

『あは、惚れちゃいました?』


なんてね。



***
いろんなものをさらっといきます←

アクルinあびす!7

さくさく進んだ森の先。
一際大きな木の下には記憶に違わない、エンゲーブの焼き印がついたリンゴが数個転がっていた。
前にルークに説明したように、イオンにこれまでの経緯を述べれば非常に驚いた様子だった。しかし直ぐに皆で髭を潰しましょう、と笑顔で言う辺り二回目のイオンは強からしい。


『今回はどうするつもりですか?』

「どうするもなにも、前回と同じにするつもりはありませんよ」

『…と言いますと?』

「ちゃんとした"交渉"をしに行きますよ」


そう言うと、イオンは意気揚々と木の穴へと進んでいった。開けた視界には色とりどりのチーグルが目に入り、どこかしらからみゅうみゅうと騒ぎだす。正直な所うるさいんですが。
そんなことを考えていると、チーグルが道を開けはじめ、その中心には一際年老いたチーグルが鎮座していた。
その姿を認めた時のイオンの笑顔を、きっと俺は忘れないでしょう。


***


「みゅうう、僕のせいなんですの、ごめんなさいですの」


チーグルの仔が森を以下略。
ライガクイーンが以下略。
という具合にチーグルの長の話をさらっと聞き流したイオンは、何が理由だろうとも食料を盗むことを正当化できません。そもそもライガクイーンを怒らせたのも貴方逹、それにライガクイーンは肉食ですよね?なぜエンゲーブの、しかもリンゴなどを盗む必要が?なんてことをつらつらと述べ、問題を起こした以上聖獣としての扱いは考えさせていただきますと締め括り、森を燃やした犯人とされたミュウとソーサラーリングをかっさらってチーグルの棲みかを後にしました。
ライガクイーンの元へ向かうのだろうイオンに従って歩いていた矢先、押し黙っていたミュウが口にしたのが先の言葉だった。


「謝るのは俺達にじゃねえ、ライガクイーンにだろ」

「それに原因を作ったのは貴方でも、事態を拡大させた責任はチーグルの長にあります。…手立てはありますから、一緒に謝りましょう、ミュウ」


しょんぼりした様子のミュウを労るようにルークとイオンが声をかける。
まあ、そうだよねえ。森を焼いたのがミュウだとしても、チーグルの長がうまーく立ち回ってればこんな事態にはならなかっただろうし。どうせこのことを盾に自分達の食料を確保しようとかいう打算があったんでしょう。ああ、嫌だ嫌だ。


「ルークやイオン様の言う通りです。しかしその手立てもこの交渉も、貴方という通訳が居なければ成り立ちません。償いの一環だと思って協力してくださいね?」

「僕、がんばるですの!ライガクイーンさんに償い、するですの!」

「よろしくな、ミュウ。…ようやく着いたみたいだし」


木々が覆う中、まるで緑の洞窟のように開いたそこには猛々しくも凛々しいライガクイーンが構えていた。



***
一旦切ります(・∀・)

アクルinあびす!6



生い茂るってきっとこういうことを言うんだろうね。
届く光さえ疎らなチーグルの森で、俺とルークはここに来ているだろう導師を探していた。
え?導師守護役とかどこかの大佐、襲撃犯とは会わなかったのかって?あんなもの来る場所がわかってるんだからいくらでも避けられってものです。襲撃犯はタタル渓谷での垂れ死んでいるんじゃないでしょうか。


「あっ、アクルあそこ!」


俺の後ろをちょこちょこと着いてきていたルークが何か見つけたらしい。視線の先を辿れば白い法衣に身を包んだ少年が魔物に周りを囲まれていた。
ありゃま、あれはちょーっとやばいんでないかい?
走り出したルークの後に続いて行くも、少年―導師イオン―を襲う魔物を止めるまでには至りそうにない。


「イオン!!」


切羽詰まったルークの声に現実に戻される。
ああ、そういえばなんとか式譜術ってやつは体に負担が――。


「アカシック――トーメントっ!!」


あ、れ?
俺の見間違いでなければ導師イオンが荒々しい声を上げてなんとか式…あ、ダアト式譜術を使った気がするんだけれど。つーか音素に還る魔物見てものすごく良い笑顔を浮かべてる。
うーん、もしかして導師イオンは俺に似て、いやいやどちらかというとアレン寄りかな。俺に言わせればまだまだ甘っちょろいって感じだ。


「おい!大丈夫かよ!?」


なんてことをつらつら考えていると、黒いオーラに気づかないルークが心配そうに言いながら地面に膝をついていた導師イオンを支えた。
一拍遅れてそこに着けば、華やぐように笑った導師イオン。


「ルーク!…と、あなたは?」

『お初にお目にかかります、導師イオン。ルーク様に雇われて護衛をしておりますアクル・マーカスと申します』


このような場所なので立礼で失礼しますと断りを入れれば、あの笑顔のまま気にしないでくださいと返された。
さてさて。先ほどの会話で違和感が一つ。

今回が初対面がはずなのに、どうして導師イオンはルークを知っているのか。
ついでに言えば俺のことは知らない。

となれば答えは一つ。


『導師イオンも二回目、ですか?』



(見開いた目は年齢相応の驚き方)



「イオンもか!」

「ルークもですか!?し、しかし前回はアクルなんて方…」

『僭越ながら私がご説明させていただきます。チーグルの巣穴に向かいながら、ね』



***
短し\(^o^)/
ぬるぬる進みます(二回目)

アクルinあびす!5

『ブウサギ!面白いですねブウサギ!!』

「可愛いとかじゃないのか?」


やってきましたエンゲーブ。
ぶーぶー言ってるのに耳の長いブウサギとやらに目を奪われている俺にルークは変なの、とへらっと笑った。
だってこいつブタなの?ウサギなの?ていうかブウサギだよ。ブウサギってなんだよ!てな感じで俺の心はブウサギでいっぱいです。


『はしゃいじゃってすみません。ブウサギを見るのは初めてだったので』

「いいよ、俺も初めて見た時はそんな感じだったし」

『ルークは優しいですねー!さて、そろそろローズさんのお家に行きましょうか』

「? どうせ後で行くことになるだろ」

『言ったでしょう?後手に回る必要はありません。持っている知識は生かして先手を取るのが吉なのですよ』


それじゃあ行きましょう。
小さな村だから、というより頭に刷り込まれているため、村一番の家ローズさん宅は簡単に見つけることができた。いやあ全部知ってるって楽チン楽チン。
コンコン、扉をノックすれば恰幅の良いおばさん―ローズさん―が応対に出てきた。こんにちは、と挨拶すれば気持ちの良い返事が返ってくる。


『私、アクル・マーカスと申します。…初対面で申し訳ないのですが、少し相談に乗っていただけないでしょうか』


一度視線を下に落とし、少しの間のあとに相手の目を見つめる。相手にだけ聞こえるように声のトーンを落とせばもう簡単。


「…訳ありみたいだね?いいよ、入んな!」


ほら、信じてくれた。ま、いつもの俺と違って本当のこと言ってるけどねえ。
そんなことを思いながら呼ばれるままにローズさんの玄関をくぐった。


***


「さあ、ここには私とアンタ達しかいないよ。話してごらん」


おばさん、というよりお母さんみたいなローズさんは俺達に紅茶とアップルパイを出してそう切り出した。あ、この紅茶中々いい香りする。
紅茶に口をつける前に一礼し、隣に座るルークに視線を送る。


『ありがとうございます。じゃあルーク様お願いします』

「え、俺!?…え、えーと」


いきなり振られたからか、すっとんきょうな声を上げるも、ルークは小さく咳払いして自分を落ち着かせる。


「――キムラスカランバルディア王国、第三王位継承者ルーク・フォン・ファブレと言います。あ、あの、礼儀とかは気にしないでくださいね」

「き、キムラスカ王族様だって!?なんでまた従者もろくに連れずこんな辺鄙なところへ…」

「先日賊に浚われて…マルクト領まで連れて来られたのです。先ほど挨拶したアクルが守ってくれ、近くにあったのがここでしたので寄らせてもらいました。望んでないとはいえ、密入国になりますし、マルクトへの敵対行動と見られないためにも早急にキムラスカへ鳩を飛ばしたいのです。…鳩を貸していただけませんか?」

「もちろんですとも!どうぞお使いください!!賊に浚われたなんてさぞお疲れでしょう…!アクル様共々宿を用意しますのでっ」

『私はルーク様に雇われたしがない傭兵です、どうぞお気遣いなく』

「ていうか、俺もそんなに畏まられると困るかも…」


苦笑した顔を向けられて、思わず俺まで苦笑いしてしまった。


***


「ピオニー陛下と叔父上とマクガヴァン元帥に鳩出したし、とりあえず大丈夫かな?」

『んー、敵国ですからなんとも言えませんが、タルタロスが一般市民に迷惑をかけていたことも書き添えましたし…多分大丈夫でしょう』エンゲーブの宿屋のベッドに座りながら、鳩を飛ばした窓に目を向ける。
鳩ってすごいねえ、よく迷わずに手紙を届けられるものだ。

ちなみにキムラスカ国王陛下にはルークの無事と俺という傭兵を雇っていることを。
ピオニー陛下にはマルクト領に結果的に無断で入ってしまったことへの謝罪と諸々の報告を。
元帥にはピオニー陛下へ送った内容に加え、近い内にそちらに行くのでキムラスカに戻るための準備を頼むことを。
そして元帥以外への手紙に、返答はセントビナーへ鳩を送って欲しいと言う旨を。

正式な紙ではないけれど、ファブレの紋章が入ったルークの日記の一部を使わせてもらったし、情報を握り潰されるなんてことはまずないだろう。
とりあえずは、まあ。


『明日のためにそろそろ寝ましょうか』

「だな」


おやすみ、アクル。
はい、おやすみなさい。



(無能な軍人に陛下からの連絡が早く伝わることを願って)



「…ん、むぅ…」

『(…襲っちゃだめかなあ)』



*****
アクルはなんでも知っているというチート。だってローレライからの刷り込みだし\(^o^)/
ぬるぬる進みます←

アクルinあびす!4

『しかしあれが本当に軍人なんですか?見た目といい戦闘といい、到底軍人とは思えないんですが』

「改めて言われると本当にな…」

『住居侵入?に誘拐でしょー。ルークを指差すなんて言語道断ですし、かるーく死刑になりますよ』


それでなくともキムラスカとやらは王族の血を酷く尊いものとして扱っている。賊を侵入させるなんてことは城を守るものにとっても王族にとっても落ち度でしかない。
さてさて。
タタル渓谷に詳しいルークの案内の元、無事に渓谷の出口にたどり着くことができた。
確かこのあとエンゲーブとやらに行くんだったっけ。本来なら寄り道せずに最短ルートでバチカルに向かいたいところだが、今後のことを考えると導師イオンとの接触を持っておくに越したことはない。
丁度辻馬車乗りのおじさんもいることだしね。


「すみません」

「うわっ!?なんだあんたらこんな時間に!漆黒の翼か!?」


ルークを見てうわっはないでしょ。うわっ可愛い!はありだけど。


『漆黒の翼がどんな方は存じませんが、私達は貴方に危害を加えるつもりはありません。賊に浚われ、ようやく逃げて来てここに。失礼ですが貴方は…?』

「賊に!?よく逃げられたな…最近は物騒すぎる。俺は辻馬車の御者だ。もしかしたらまだ近くに賊がいるかもしれないし、首都まで行くが乗ってくか?」


くい、とおじさんが指差したのは恐竜みたいな動物が繋がれている辻馬車だった。
無論断ることなく、俺とルークは頷いた。


『エンゲーブは通りますか?』

「ああ、エンゲーブまでなら二人合わせて一万二千ガルドだ」

『…いちまんにせんガルド』


ガルドって何?この世界のお金の単位か。どのくらい高いのかはよくわからないけど、まあガルドなんて一つも持ってない。
ルークはもしかしたら持っているかも知れないけれど(だって貴族だし)ここでポンと現金出しても怪しまれるかも(賊に浚われてお金があるのはおかしすぎる)
ルークが自分の懐を探るのを手で制し、俺は着ていた団服を脱いで、おじさんに手渡す。


『このコート、装飾は全部銀でできているんです。多分そのぐらいの値段にはなるかと』

「ほう――よし、乗ってきな!」

『ありがとうございます!』


鉱物が違わなくてよかった。
目配せして、行きましょうと言えばなんだか申し訳なさそうにルークは俯いていて。


「俺、この時のために家から金持ってきてたのに…」


おじさんに聞こえない程度の音量で呟くルークに、ルークが二回目ということで何かしらの準備をしていたことに気づいた。そして俺がコートを差し出したことに何故だか負い目を感じていそうなことも。


『そのお金はまた後で使いましょう?一回目と同じにする必要はないんです、お金が足りなくなることもあるかもしれない』


だからそれはまた後で。
スマイル付きで促せば、ルークはぱあっと表情を明るくさせてこくりと頷いた。うんうん、可愛い子は笑顔が似合うよー。

そんなわけで俺達は優しいおじさんの辻馬車に揺られ、エンゲーブを目指すことにしました。



(途中マルクト軍に轢かれそうになったりして)



「アクル何してるの?」

『状況を詳しく書き記したものは説得力があるんですよ』

「ふーん?」



***
眼鏡死亡フラグ
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