トロイメライを聴きながら渋谷を通過する。
ツウカギレイ。いつでも、朝を想起させるメロディだと思う。
いつまでもきれいだった、夜空はおわりがきて、
霊魂は頭上を走り回り、
祈るようにわたしに溶けていく。
。
地下鉄に乗ると白い光に包まれることがある。そのたびに、「マリンスノーだ」と呟く。
蜘蛛の糸。海の底。水を渇望する砂漠。
落ちてくるのかこないのか。悠久の時間が過ぎて、自分が落下していく。
気がつくと、空が赤く燃えていて、ギラギラと反射した涙が川面に咲く。全てが凝縮したその蜜に、蜜蜂は近づけない。ごめんね、掟なの。
ありもしない計算式を書きなぐり、定理として降伏させる。
高笑いをしている君の脇腹をチクリ。針が刺さって永遠の愛の話が始まるんだ。その冒頭、あなたは本能的に死んでしまう。蜜蜂なんかに生まれたからだよ。
でも、僕は蜜蜂でよかったと思う。君もあなたも蜜蜂にはなれないからね。
落下。落ちる。菊。虹。
心無しか、横切った水滴は、黄色だった。
ピンときたあなたはビレバン人間。
2、3年前にビレバンで買った。
ジブリの歌などを英語でカバーしてる人。声だけではなく、演奏も魅力的な歌が多い。
おすすめは、テルーの唄。
「映画をみるときはきっと君は光っている。反射している」
「水面になびく日射は深海の魚を照らす。」
「空を見上げて、空を探して」
朝起きると、オレンジに触れたくて、気がついたらウイスキーを飲んでいた。
自意識に八つ裂きにされたい。欲をいえば串刺しにされたい。
もう嘘ばかり。自分が悪者になるのも飽きた。エゴの塊をローストしたらわたしの出来上がり。
炭に溺れて、網をつかみ、ひっくり返る。
転んだ先には薔薇の茎。
二階堂奥歯が、人が死ぬのは20メートル以上つまりマンション7階〜8階の高さが必要だと言っていた。時間は2秒。
たった2秒。刹那。煌めき。紫。
4階だからきっと1秒だ。そんなことを考えながら紅茶を飲んでいる。アッサムの熱さが限界の自己を保ち、荒れ狂わなくて済む。
僕は生きていることには向いていないのかもしれない。
コップを額に押し当て、一抹の生を噛み締めながら。
愛に撃ち抜かれて飛び出た血がきれいなのは、空が青いから。
僕たちは瑠璃色に恋をする。
緑柱石に嫉妬する。
飲みほしたウイスキーが体を半周したころ、ほしたちはため息をはく。
銀と澱みを虚空に灯して。キスをして。