スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

海にいきたい

今は転勤で地方に住んでいる姉、鈴子の話。

友人(詩春さん)と電話しているとき、突然海に行きたくなった。時間は午前一時を少し回った頃。
鈴子のアパートは海から程近く、歩いても数分でたどり着く。だからと言って、こんな時間に出ていく理由がない。
だのに、そのときの鈴子はどういうわけか、上着を羽織ってサンダルを履いていた。

詩春さんとの通話はそのまま。
鈴子は海に向かった。波が高いのか、ごうごうと音がする。

海岸に着く。
なぜか、私は満足しない。
横の小道をそのまま進む。

詩春さんが犬の吠える声がするという。
鈴子には聞こえなかったけれど、面倒だったので、吠えられていることにした。

小道の先に、自販機の明かりが見えた。
ちょうど、明かりが照らした先になにかの絵がある。

横になった仏様。

横には「共同納骨堂」の文字。
共同墓地でなく、共同納骨堂。
無縁仏。

急ぎ足でその場を離れ、アパートに戻る。
途中、詩春さんがまた犬の鳴き声がするという。

部屋に戻って、鍵をかける。

アパートのてすり、その棒をなにかでガンガン叩く音。…………が、すると詩春さんがいう。

鈴子に聴こえたのは、ごうごうという波の音だけだった。
音はしばらくして、去っていった。
前の記事へ 次の記事へ