霊が見えるという詩春さん。生まれてこれなかった水子もわかる。
「お母さんにくっついてるから、あとはその表情、な?」
同意を求められても困る。鐘子は苦笑いした。
そんな詩春さんの友人が、最近結婚した。大恋愛の末である。
そんな幸せそうな友人に、詩春さんは水子をみた。
しっかりと友人に抱きついている。
「もしかして、結婚前におろした?」
ごくストレートに、詩春さんは尋ねた。
気心が知れた仲だからこそ。
「……どうかな?」
友人は一瞬だけ顔をひきつらせたが、すぐに元の笑顔に戻った。
「いろいろあったんでしょう。怖いですね」
鐘子が言うと、詩春さんは首をふる。
「本当に怖いのはさ、あいつの旦那、無精子症だったんだよ」
誰の子、おろしたんだろうね。そう言って詩春さんは笑った。