「びっくりした!」
そう言って、尚樹は指差した。
デパートの二階から、見下ろすようにマネキンがこちらを向いている。
「うわっ」
思わず鐘子も声が出た。まさに二人を凝視しているかのよう、そんな位置にそれはあった。
遠いのと暗いのとではっきりはわからなかったが、女性のものと思われた。
人形とわかっていても、気味のいいものではない。
しばらくして、鐘子と尚樹はふと見上げる。
マネキンが、動いた。
今までわざと止まっていたのかと疑いたくなるくらい、ごく普通に。
足早に階段を降りていくのが見え、視界から消えた。
「……どっちなんだよ」
尚樹が苦笑した。人なのか人形なのか。
「……どっちなんだろ?」
鐘子は言いながら尚樹の腕を引っ張って立ち上がる。
マネキンは、あるいは人は、一階でまた二人を見ていた。