「夢の話ってのは、つまんないかな?」

 鐘子が返事をする前に、大柴さんは内容に入ってしまった。

「学校の校舎みたいなとこを歩いてたんだ。なんの目的かはわからないが、ただただ廊下や階段をね」

「ほーほー、そこに幽霊が現れたと?」

「もう少し聞いてくれよ」

 興味なさげな鐘子の相槌に、大柴さんは苦笑い。

「普通、夢に出てくる学校って言ったら自分の母校だろ?」

 大柴さんの夢に出てきた学校は、記憶にまったくないところだった。ただ、学校だという感覚がしただけで、教室らしいものを見たわけでもない。

 どこか、ずれた夢だった。

「それから、先生に会ってさ」

「先生も知らない人だった」

「いや、先生は知ってたんだよ。ただ、」

 職場の同僚が、先生という立場で出てきたんだという。

「そこで俺さ、『あぁ、夢だな』って気付いたんだ」

 そして。

「『お前、先生よく似合ってんな』って言ったんだよ」

 すると、同僚が言った。


 ――ばれたか。


「あれは一体どういう意味だったんだろうな」

 大柴さんは、小さく震えた。