「ロボットみたいな幽霊、見たことあんだよ」
尚樹が言ったことの意味がわからなかった。わからないだけに、気味が悪かった。
「変なこと言わないでよ」
鐘子は腕枕されたまま、尚樹の脇腹に顔を押し付けた。
「見えるくせに怖がりなんだな」
そう言いながら、彼氏は鐘子の髪を撫でる。
昔、尚樹が子供だったころ、両親と同じ部屋で寝ていたとき。
なにかの気配に目をさまし、目の前に視線を向けると、暗闇のなかに人型のものが浮かびあがっていた。
「よくある話じゃない」
鐘子は顔を上げ、尚樹のほうを向いた。
「まぁ、聞いてって」
浮かび上がっていた人型のもの、それがなにかおかしい。身体の部分部分が四角い。四角い人型の物体が立っている。
まるで漫画に出てくるロボットのようだった。
尚樹は恐ろしさに目をつむり、朝が来るのを待ったという。その後、このロボットが現れたことはない。
「これだけなんだけどさ。僕が見たなかでは一番怖かったな」
鐘子はため息をついて、尚樹の背後から目線をそらした。引っ越しのときの段ボールはもう片付けたはずだよな、と考える。
いま、彼氏の後ろに積み上がってる四角い箱はなんなんだろう。