陽菜



すごくいい顔をして戻って来た優ちゃん


「誰か叫んでたでしょ」

「みんなかな(笑)」

「どういう事?」

「なんかにゃんにゃん以外全員集合してた」

「うそ、どうして呼んでくれなかったの
仲間はずれとかひどい(怒)」

「いや、集めたわけじゃなくて(汗)ごめんね」

「まあいいけど・・・・それよりもう一度セリフ合わせしよう」

「そうだね、どこからする?」

「最初から」

「え、そんな時間ないよ」

「だって不安なんだもん・・・・」

「あれだけ練習したんだから大丈夫」


俯くと背伸びしながら陽菜の頭を撫でてくれる優ちゃん

優ちゃんに言われると本当に大丈夫な気がしてきた


「じゃーさ、ここだけ
悪いやつをやっつけて陽菜を救いに来てキス・・・
のふりする所までしよ」

「う、うん・・・(;´-∀-)」


本当はキスをするんだけど
麻里ちゃんとのおけいこの時も本番のお楽しみ(*`ω´) 
とか言って寸前で止めていた

それを知らないはずなのに優ちゃんは
世間は麻里ちゃんとにゃんにゃんのキスを見たがってたのに
私がしたら大炎上しちゃう

と言って口元が見えない演出に変えて下さいって
演出家の先生に頼みこんで少し変わった・・・・

陽菜は・・・・・しても良かったのに・・・
優ちゃんとなら、優ちゃんにならされても良かったのに・・・




ドキドキしながら迎えた上演時間

陽菜と優ちゃんの二人だけが立つ舞台の幕が上がる


ザワザワザワ・・・・


どよめく観客席、聞こえてくるコソコソ話
舞台観劇は静かに見てよね(怒)

パンフレットももちろん間に合わなくて
主演は麻里ちゃんのままで優ちゃんの姿は
昨日少しだけ流れたゲネプロの一瞬だけ映った姿だけだったから
その時の衣装は間に合わせで酷かったもん

一瞬不安な顔をした陽菜を見て優ちゃんの口が小さく動くのがわかった

”大丈夫”    てね

どっちが素人かわかんないね(笑)


そこから観客・・・
ううん陽菜達演者までも引き込まれていく優ちゃんの演技

上演時間が長くない舞台だから休憩なしに進んでいき
クライマックスのアクションでは
みんなのつばを飲み込む音や
おぉぉ!というため息が聞こえて来るかのようだった

「来たよ」

「きっと来てくれると思ってた」


セリフじゃなく本当に優ちゃんが
陽菜達の元へ来てくれたんだって言う気持ちが言葉になり

気が付いたら本当のキスを陽菜の方からしていた


降りていく幕の間中ずっとね


静まり返る劇場


「にゃんにゃん(;´-∀-)」

「しちゃった(бвб) 」

「やっぱりダメだったのかな・・・・」


静かすぎる劇場に眉を下げ泣きそうな優ちゃん


「そんな事」


無いって言わないうちになりだした拍手
だんだん大きくなり幕の方を二人でボーと見ていると


「何してるんだカーテンコール行くぞ」

「う、うん」


立ち上がり幕が上がるのを待っていると
全員によるスタンディングオベーション


「うそ・・・・」


飛び交うブラボーと言う言葉に陽菜の目から涙がこぼれ落ちる

横を見ると陽菜の方を向いて
涙を流しながら必死に拍手してる優ちゃんがいて


「何してるの?」

「みんなと一緒に陽菜へ拍手してる」

「いや、これ優ちゃんへの拍手だし」

「アハッそんなわけないじゃん」

「こら二人共お客様に頭下げろ」


ケイさんに怒られちゃったじゃんむぅ


公演後の囲み取材に優ちゃんの姿は無かった