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Maybe 29 最終話

その日の夕方いつもの中華屋さんで打ち上げ

秋元さんが次の日にしようって言ってたんだけど
明日はクリスマスイブだから
みんなの大反対があって当日に


だからみんなで一緒にお店へ向かう


もちろん陽菜ちゃんとは手を繋いで(-∀-`)



私が泣きじゃくり収まりがつかなくなってた時
いきなり抱きしめられて柔らかいものが私の口をふさいだ

それは舞台上でした時よりも優しくて・・・

長い口吻に
私の腰はまた砕けてしまった

唇が離れたと思ったらおでこにチュッとキスをされ


「優ちゃんは陽菜のだからたとえ劇中であっても
陽菜以外とはキスさせないし
陽菜ももう優ちゃん以外とはしないから
台本作りよろしく」


そう言い放つとまた私を引き寄せた

放心状態の私・・・・
そしてもうひとり


「私もたかみな以外とはしない(∵)」

「そうなったら相手役代われないね(*`ω´) 」

「代えなくていいじゃん」

「じゃー佐江が主演の時はどうするの」

「わ、私が(汗)」

「ゆきりん・・・・じゃー篠田いないじゃん(汗)」

「ここに余ってまーす(ΘωΘ) 」

「遠慮しまーす(*`ω´) 」

「なんでぇー(泣)」


と言うやり取りがあったんだけどね(笑)




「カンパーイ!」


もちろん私の隣には小嶋さんが座ってるわけで・・・
せっせ、せっせと料理をお皿に入れお世話しています


「今日は飲み過ぎたら知らないからね」

「置いて帰るって事ですか?」

「違う、寝ててもやっちゃうってこと(бвб) 」

「やっちゃう?」

「こ、こじぱそう言う事はこういう所ではだな(汗)」

「そう言う事?」

「はぁ・・・篠田がゆっぴーのバージン奪いたかったのに」

「・・・・・・・」


意味が分かって顔が熱くなる
それに追い打ちをかけるように耳元で


「しらふでもやっちゃうけどね(бвб) 」




お皿を落として怒られたのは言うまでもない




おしまい

Maybe 28

「昨日のリハ通りにすれば成功間違いなし!」

「頑張ろう」

「ゆっぴーとたかみなは自分は王子様を10回言う」


自分は王子様をみんなの前で10回言わされ


「自分はイケメンを10回(*`ω´)」


自分はイケメンを10回言わされ

なんか恥ずかしさが無くなってきたぞ
こうなったらやけくそだ何でも来い!


「篠田最高(*`ω´)」

「篠田最高、篠田最高、しのだ・・・・え?」


「いやー照れるな(*`ω´)」

「ふざけてないで円陣組むよ」

「ほーい(*`ω´)」


なんか緊張がどこかへ行っちゃった(笑)


「たかみな」

「優ちゃん」


しっかり握手して見つめ合って頷き


「頑張ろうね」

「うん」


舞台の中心へ向かって歩き出す









「いやー始めはどうなるかとヒヤヒヤしたよ」

「それ私も思った、お客さんの反応冷たかったもんね」

「あの状態があと5分・・・いや3分続いてたら
篠田独演会しようと思ったもんね」

「麻里子の話なんて誰も聞かないし(бвб)」

「余計に凍りつかせるよね(∵)」

「シクシク(*`ω´)」



誰もが双子の王子役は篠田さんと秋元さんか佐江だと思っていた
なのに出てきたのが見たこともない人物

黒子を覚えてる人なんて皆無だろうしね

それに王子が小さな二人だったから会場はざわついた

でもそれは想定内だったから
私とたかみなは練習通り
自分の今出来る事を精一杯頑張った
そしたらカッコ可愛いじゃんて言う声がどこからか聞こえてきて・・・
そこから少しづつ雰囲気が変わっていったんだ

酒場のシーンではいつもの人気メンの先輩たちが出て来ると
笑いや好感の持てる声が聞こえてきたし

劇中は王子が町娘にグイグイ引っ張られて行くのが受け
こちらの思惑通り笑いが起きる

王子たちは自分の身分を隠し酒場に通っていたから
客たちとも友達になってた

しかしある日近隣の王女との婚姻の話がきて
どちらかの王子が結婚しなければいけなくなった
それも婿養子として・・・

町娘の姉妹のことを好きになっている事を知っていた二人

お互い自分が好きなのはバレてないと思っていて
自分が我慢して王女と結婚すれば兄弟は幸せになれる

お互いが思い合った結果
二人共町娘のことを諦めようとしていた

なんでも話し隠し事をしない姉妹は
よそよそしくなっていく二人を不審に思い
情報を集め出す
そして二人共自分たちの元を離れていくと知って
強硬手段に出る

好きと言えなかったけど王に名乗り出る前に
最後にもう一度会いたい

最後の思い出を作りに来た二人を
町娘達はそれぞれ逆の角に呼び出し
何も言わずにいきなりキスをする

初めてのキスに放心状態の可愛い王子

娘からキスされたのに
キスの責任を取ってと迫られ二人は頷かされるはめに・・・



「でもさ、あの時いつまでキスするんだよって突っ込みたくなるくらい
長かったじゃん」

「それも示し合わせて誰かが合図してたんじゃないかってくらい
同時に終わったからどっち見ていいか迷ったもん」

「その後の王子二人なんて尻もちついてたし
それも同時に(笑)」

「さすが双子って声が出て笑いがおこったからね」

「でもさ、始めは王道な話だったはずなのに
何故か喜劇みたいになってたよね」

「そこがまた良かったんだよ」

「それにあの子達がまさかあんなに人気が出るだなんて誰が思った?」

「そうそう、資金集めの写真会で
篠田さんや小嶋さんに引けを取らない・・・
いやもしかしたら多いんじゃないかってくらい並んでたよね」

「可愛い〜とか守ってあげたいーて言われて
抱きつかれたりしてたら
急にハグ1回200円が追加されたからびっくりした」

「ねえねえ、小嶋さんの機嫌どんどん悪くなっていってたの知ってた?」

「うん、気づいてた
だってどんどん列が減っていってたもん
怖いから今日は一回でいいですっていって優子に並びに行ってたから
益々機嫌悪くなってた(笑)」


先輩たちの話をドキドキしながら聞いてるんだけど
褒められてるのか面白がられてるのかわからない


「で、ゆっぴーとたかみな、感想は」

「演じてるというか・・・先輩方に引っ張られて最後まで
やりきることが出来ました
こんな未熟な私をご指導いただき本当にありがとうございました」

「そう言う感想じゃなくて」

「へぇっ?」

「キスだよ、あの長ーいキス(*`ω´) 」

「あ、あれは・・・なんていうか・・・
頭がボーとしてきて何も考えられなくなって・・・
セリフ飛んじゃってすみませんでした(汗)」


あの時私達のセリフがあったんだよね
でも腰抜かしちゃって腑抜けになるってあんな感じなのかな

で、小嶋さんと前田さんが機転をきかせ
それぞれ交互にアドリブを入れてまた笑いを取って・・・
篠田さんが中から出てきてまた笑いを取るという・・・

多分私には一生無理だろうな・・・・・

だから

「皆さんのおかげで最高の思い出が出来ました
本当にありがとうございました」

頭を深々と下げお礼を言った


あれだけ練習したのにセリフ飛ばしちゃうし
下に座っちゃうし・・・・
やっぱり私には向いてない


だから、今日を最後にしよう
これだけで、この素晴らしい思い出だけで
これからの大学生活を有意義に送れるから・・・

そう思ったらまた涙があふれてきて・・・
バレないように
顔をあげず俯いたまま
出て行こうとしたら腕を掴まれ


「何辞めようとしてるの、あなたも陽菜を捨てる気」

「違います・・・捨てるとかじゃなくて・・・
小嶋さんに私はふさわしくないです
小嶋さんには佐江みたいな王子が似合います(涙)」

「はぁ?どうして陽菜の相手をあなたに決められなくちゃいけないの」


「だって、身長だって容姿だってお似合いだからぁー(泣)」


小嶋さんがあなたって呼ぶ時はめちゃくちゃ怒ってる時
でも、どうする事も出来ないんだもん
こんな私じゃー小嶋さんを幸せに出来ないんだもん


「宮澤」

「はい(汗)」

「陽菜にキスして」

「え!?」

「主役やりたいならそれくらい出来なくちゃいけないでしょ」

「・・・・わかりました、それでは失礼します」


ゴクリと喉を鳴らし近づく佐江


ほら似合うじゃん、佐江の方が、佐江の方が・・・・




『ダメ!!』




佐江に抱き付き動きを止めると

私の声にかぶせて来たもう一人の人が
小嶋さんを後ろから羽交い絞めにしていた


「・・・・・・・ゆきりん?」


「は、陽菜ちゃんごめん、でも、でも
今、佐江ちゃんとするのはなんか違う気がするから・・・・(汗)」

「優子も離して(笑)」

「ご、ごめん」


私どうしちゃったんだろう
小嶋さんは私のモノじゃないんだから
誰とキスしようが誰とセ・・・・・

やだ、やだ、もうほかの人としてる所は見たくない
たとえキスであっても・・・・


「陽菜ちゃんは私としかしちゃダメなの(泣)」


みんなの前でワンワン泣いてしまった






Maybe 27

いよいよ本番当日
初めての舞台と言うだけでも緊張が半端ないのに
キスのことを考えたら


「どうしよう・・・・ドキドキして口から心臓が出そう」

「優ちゃんはいいやん、私なんて鼻から出そうやわ」







優ちゃんはあの日、一回でもキスしてるからまだいいやろって
うちなんか一度もしたことないのに本番でするんやでって

たかみなが興奮しながら言ってきたのは昨日の夜の電話

もちろん小嶋さんの前では出来ないから
外に出て電話してた




初衣装合わせの時


「わぉ〜ほんとに双子みたい(*`ω´)」

「そうかな全然違うけど(бвб)」

「そうだよ、違うよ(∵)」

「双子なんだからそっくりな方がいいんだよお二人さん」

「じゃーさ陽菜達姉妹なのに似てないじゃん」

「腹違いの姉妹にしとく?」

「ややこしいだろぅ(怒)」

「アハハアドリブでさ間違えて逆にキスしても面白いんじゃない」

「全然似てないから間違えるわけないし(怒)」

「そうだそうだそんなに言うなら
麻里子と野呂ちゃんがキスしろよぅ」

「それは・・・・・ごめんなさい(*`ω´)」

「なんか私が傷つけられてる(涙)」



で、一度逆にしてみようってなって
前田さんが私に迫ってきた時
たかみなが何故か私に抱きついてきて

「優ちゃんはキスし過ぎや!」


と言って私が怒られたという・・・・

ニヤニヤしてる篠田さんと少し嬉しそうな前田さん
小嶋さんは・・・・眉間にシワを寄せてたっけ

で、逆パターンはお蔵入りになっての帰り

たかみなにごめんと謝られた




電話が終わり中へ入ると


「風引いて舞台に穴あけないでよね
それと家の中で出来ない電話はしないでほしいんだけど」


そうだよね、気分悪いよね


「すみませんでした・・・」


「明日早いからもう寝る」

「私もお風呂入ったらすぐ寝ます」


冷え切った体にお風呂のお湯は熱いくらいだったけど
自分が入った後は必ず追い焚きを押してあがって来てくれる
小嶋さんの気配り
一緒に暮らしてみて小嶋さんの良いところがどんどん見えてきて
もっともっとみんなに知ってほしい
小嶋さんの素晴らしさを知ってもらいたいって思ってるんだけど
もっと人気が出て私の事を相手してくれなくなったらどうしよう・・・

て、考えるようになって・・・・
まだみんなに言えないでいる私は最低かもしれない・・・


部屋に行くと間接照明だけ点いていた

真っ暗にしないと寝れないっていつも言ってるのに
こう言うところが優しい

起こさないようにそっとベッドに入ると
逆を向いていた小嶋さんが寝返りをうち私に抱きついてきた


これがいつもの体勢なんだけどね
私は抱きまくらの代わりだから

でも小嶋さんのぬくもりと甘い匂いにいつも睡魔がやってきてすぐ寝ちゃう

今日は無理だろうな、絶対に寝れないだろうなって思ってたのに


「大丈夫だから」


そう囁いて背中をトントンと叩いてくれる小嶋さん

今まで起きて待っていてくれたことも嬉しかったけど
大丈夫と言う言葉と声に涙が出そうになって
いつもは絶対にしない行為

ギュッと抱きしめ返し


「ありがとう陽菜ちゃん」


そう言葉を返すと
頭に温かい何かが触れた、きっと唇だと思う


そのままギュッと目を閉じたらいつの間にか眠っていた

Maybe 26

「コンコン・・・・失礼します
途中で抜け出して申し訳ありませんでした!」

そう言って頭を下げ謝ると

「自然現象なんだから仕方ないよね」

「へぇ?」

「そうそう、野呂ちゃんなんて毎回本番ギリギリにトイレに行くもん」

「煩いよ、行きたくなるものは仕方がないんだから」

「よし、大島が戻ってきたことだし
続きから始めよう」


たかみなが近づいて来て


「キスはなくなったから安心して」

「私のせい?」

「いや・・・・どうやろ(汗)」

「ダメだよ!」

「うわっ、声大きいって(汗)」

「大島どうした?」

「秋元さん、私のせいで変えないでください
少しでもいい舞台にしたいので・・・
私頑張りますから」

「いいのか?」

「はい・・・・・」

「よく言ったよゆっぴー(*`ω´) 」

「良し、じゃーその場面は今はフリだけにして
本番に取っておこう」

「え〜何回でもするのにー(бвб) 」

「ニャロがするとエロくなるからみんな見入っちゃって
練習にならないでしょ(笑)」

「お金取ろうかな」

「お、それいいね、次の資金にあてれる」

「資金?」

「そう、舞台するにはお金がかかるんだよ」

「じゃー写真でお金取ってたのって・・・」

「資金集めだよ、何だと思ってたの?」


食べたり遊んだりするお金かなって思ってたなんて言えない(汗)


「ほら後1時間しかないから始めるぞ」




練習が終わり家に帰る・・・もちろん小嶋さんの家だけど
篠田さんも来て夕飯を作ってくれている


「ぱぱっと作っちゃうから先にお風呂入っといで」

「はーい(бвб)
優ちゃん行こ」

「・・・・・へ?」

「一緒に入れば早いじゃん」

「む、む、ムリです(汗)」

「なんで?陽菜の体見たくないの」

「いや、小嶋さんの綺麗であろう体を
見たくないって言ったら嘘になるかもしれないですが
キスも今日初めてしたところですし(汗)
服の上からでもよく分かる大きな胸とか
この前の着替えのときにちらっと見た綺麗な肌とか
見てみたいですけど、あぅ・・・・」


「クックックッ・・・・許してあげなよニャロ」

「はぁスッキリした
陽菜に迎えに行かせるなんてもう止めてよね」

「でもさ、ゆっぴーて純粋すぎて可愛いよね
やっぱりニャロなんか止めて篠田と付き合わない(*`ω´)」

「・・・・・・お風呂から出てくるまでに作っといてよ」

「はいはい、無駄な話は止めまーす(*`ω´)」


なんだ冗談だったんだ・・・・そうだよね
私なんかに本気なわけないよね
キスだって舞台が良くなるためにしたんだから・・・・


「ゆっぴー」

「は、はい」

「余計なこと考えてるんだったら手伝ってくれるかな」

「すいません(汗)」


どうしてこの人達は私の考えてることが分かっちゃうんだろう
私ってそんなにわかりやすいのかな


「何をしたらいいですか」

横に並ぶと小さな声で

「前にも言ったけど
ニャロが他人にあそこまでするのってめったにないんだよ
例え自分が悪くても嫌いな子の所へは行かないし
ましてや迎えになんて絶対に行かない
それに家には誰も泊めない
篠田だって泊まった事無いんだよ
本人気づいてないみたいだけど
結構ゆっぴーの事気に入ってるから
ニャロを裏切ることだけはしないでね」


「それは・・・・私からは裏切るなんてしません
先輩ですし・・・・」

「じゃー何をいつも悩んでるの」

「どうして私なんだろうって・・・
私なんて平凡で何もできないタダの後輩なのに・・・・」


「ゆっぴーも気づいてないんだね(*`ω´)」

「何をですか」

「舞台が終わる頃には気づけるし・・・・
みんなも気づくと思うから
今は言わない」


思わせぶりな篠田さん

何に気づくんだろう・・・・


この舞台で違う自分を見つけられたら嬉しいけど
多分ムリだろうなー・・・・


だって私だから・・・・


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