もう一度初恋 16 最終話

その日優ちゃんは家に泊った


引っ越してきた日は優ちゃんのベッドで一緒に寝たけど
今日は陽菜のベッドに優ちゃんが寝てる


「ねえ」

「ん?」

「いつから陽菜の事好きになったの?」

「それは・・・・物心ついた時かな」

「はぁ?なにそれ
じゃぁその時からずっと好きだったって事?」


コクンと頷く優ちゃん


「でも陽菜卒業式の日にフラれたよね」

「あれは・・・・次の日あそこを離れるのに
付き合う事なんて出来ないでしょ」

「どうして?遠距離とかあるじゃん」

「遠距離なんて無理だよ
高校へ行ったら他の中学の男子もいるし
男子が陽菜を放っておくわけないでしょ
その中にはかっこいい子もいるだろうし
どうせフラれるなら付き合わない方がいいかなって
傷は浅いうちがいいから・・・・」

「陽菜はフレれて深く傷ついて
ずっと引きずったまま今日まで来たんだからね
なのにまたフラれて・・・・
もう実家に帰ろうかって思ったんだから」

「あの時はまだ才加と付き合っていたから
陽菜の告白を受け入れたら二股になるでしょ
だからちゃんと別れて私から言うつもりだった」


真面目と言うか、責任感が強いというか・・・

と言う事は陽菜達ずっと両想いだったんじゃん
なのに優ちゃんは・・・・


「浮気された気分」

「え?」

「陽菜の事が好きなくせに違う人と付き合って最低」

「いや、だって陽菜はとっくに私の事なんて忘れてると思ってたし
いつまでも引きずってないで
新しく踏み出そうって頑張ってやっと恋人が出来たんだ
才加とは一年前に知り合って初めて付き合った人だったから」

「どうしてあんな浮気性な人と付きあったの
それに暴力まで振るわれて」

「趣味とかが同じで話があったんだ
私といる時は私だけを見てくれるし
浮気相手は全部遊びでお前が本命だって言うから」

「そんなの全員に言ってるよきっと」

「そうだよね・・・・
多分陽菜を忘れるのに誰でもよかったんだ
私こそ才加に申し訳ない事をしたと思ってる」


どこまで人がいいんだか・・・・


「別れられたの?」

「たぶん・・・・
抵抗も何もしなかったら面白くないって追い出されたから」

「でもまた来るかもしれない」

「だよね・・・・やっぱり陽菜は実家に戻りな」

「優ちゃんはどうするの?」

「才加に許してもらえるまで話してみる」

「話してわかるんだったら殴られてないって」

「そうかもしれないけど・・・」

「・・・・・・・・わかった!」

「何がわかったの?」

「ここを引っ越して二人で部屋を借りて一緒に暮らそう
それだったらパパたちも安心してくれると思うから」

「アハッさすが陽菜
ぶっ飛んでるね(笑)」

「そうかな?それしか方法は無いと思うんだけど」

「・・・・確かにそうかも
陽菜はそれでいいの?」


陽菜の初恋は優子

誰?初恋は実らないなーんて言ったの

そして優ちゃんの初恋も陽菜


「ねえ、もう一度初めから始めよう(бвб)」

「何を?」

「恋だよ恋!」



もう一度初恋から始めよう 


ねえ、優ちゃん





おしまい

もう一度初恋 15

結局二泊して日曜日の夕飯を食べてから帰って来た


マンションの入り口で暗証番号を打ち込んでる
帽子を深くかぶりサングラスとマスクをした小さい人

顔なんて見なくてもわかる


「優ちゃん」


声にビクンと反応するも振り向かずに
入って行こうとするから追いかける

もちろん同じエレベーターに乗り込んだ


「どこか行ってたの?」

「実家に帰ってた」

「そっか・・・・」

「・・・・・ねえ、どうして陽菜を見て話さないの?
そんなに嫌い?」

「違う・・・・」


しばしの沈黙
陽菜の降りる階でエレベーターが止まり扉が開く


「・・・・・着いたよ」

「知ってる」

「早く降りて」

「やだ」

「人が待ってたら迷惑でしょ」

「変な人が待ち伏せしてたら怖いから
玄関まで送って」


無言で降りていくから後ろからついて行く


「着いたよ・・・・おやすみ」


あまりにそっけない態度にムカッときて
帽子に手を伸ばし剥ぎ取ると
その勢いでサングラスが落ちてしまった


「それ・・・・どうしたの(汗)」

「何でもない」

「何でもないことないじゃん
そんな痣普通出来ないよ」

「階段から落ちて・・・・
大したことないから、じゃーね」


行こうとするからマスクにも手をかけると
口元も切れていて血がまだにじんでいた


「それって・・・殴られたの?
もしかして秋元さん?」

「・・・・・・」

「とにかく中へ入って」

「ダメだよ陽菜にも迷惑がかかるから(汗)」

「どうして陽菜に迷惑が掛かるの?」

「それは・・・・・」

「来て!」


無理やり部屋の中へ入れ
傷口の手当て・・・・と言っても何も無いから
タオルを濡らして傷口を拭いてあげて
腫れてる目を冷やしてあげた


「ありがとう・・・・」

「ちゃんと話して」

「才加に別れて欲しいって言ったんだ
そしたら理由を聞かれて・・・
好きな人が出来たからって言ったらこうなった」


好きな人が出来た?
え、うそ・・・他に好きな人がいたの?


「誰だって聞かれて言わないでいたら
あいつだろって言われて・・・
違うって言ったのに襲ってやるって言うから
やめてって反抗したら殴られて・・・・・」

「酷い、女性を殴って怪我をさせるなんて最低」


そうだ


「ねえ、写真撮ってもいい?」

「どうして」

「次に酷い事されそうになって
警察に助けを求めに行ったりするときに証拠になるから」

「そっか・・・陽菜凄いね」


こういう事に関しては機転が利くんだよね(бвб) 

傷跡は顔だけじゃなくて体中にあった

もしかしたら無理やり襲われたのかもしれない


「これ訴えてもいいくらいだよ」

「ううん・・・根はいいやつだから
今はカッとしてるだけで冷静になったら大丈夫だと思う」

「優ちゃんがそう言うなら・・・」

「ありがとう、もう大丈夫だから帰るね」

「もしかしたら部屋に来るかもしれないんでしょ
今日はここに泊りなよ」

「でも、ここも知ってるから私が部屋にいなかったら
ここへ来るかもしれない
そうしたら陽菜が危険だから戻るよ」

「どうして陽菜の所へ来るの?」

「それは・・・・・陽菜だってバレたから」

「何が?」

「好きな人が」

「え、優ちゃんの好きな人って陽菜なの?」

「そうだよ」

「うそ、え、でも陽菜フラれたんだよ」

「それは・・・ごめん」


意味わかんないんですけどぉー

もう一度初恋 14

それから二週間
宣言された通り優ちゃんとは一度も会わなかった

同じマンションなんだからすれ違ってもいいはずなのにね


「ただいま・・・・」

「いらっしゃい・・・あら、あなた少し痩せた?」

「わかんない」

「ちゃんと食べてるの?」

「食欲ない」

「ちゃんと食べなきゃダメよ」

「コーンフレーク食べてるもん」

「そんなのばっかり食べてるから覇気が無いのよ」

「いつもこんなだもん」

「料理教えてあげるから毎週末帰ってくるか
ここへ戻って来るかしなさい」


そうした方がいいのかもしれない
一人暮らしは自由だけど
全て自分でしないといけない
今までママに甘えてたから分からなかったけど
仕事から帰って来てご飯作ってお風呂洗って
洗濯して・・・
すべて自分でしないといけないとか
今の陽菜にはまだ無理だったみたい


「ただいま!陽菜帰って来てるのか♪」

「お帰りなさい(бвб) 」

「今日は嫌に素直だな
なんだ家に帰ってきたくなったのか(笑)」

「ん・・・・・」

「そうかそうか♪いつでも戻ってきなさい」


嬉しそうなパパに
あなたも甘いわね
な〜んて言ってるママも相当陽菜に甘い

その日は久しぶりに実家に泊った

陽菜の部屋のベッドと布団はそのままで
着替えもあるからそこに今もそこに住んでる錯覚を起こす


もしかしたら優ちゃんに会ったのは幻で
陽菜はずっとここにいて
一人暮らしなんてしてなかったのかもしれない


その夜夢を見た


「陽菜いい加減に起きなさい
何時まで寝てるの」


懐かしい声とセリフに目が覚める


「ふあぁぁ〜おはよう・・・お腹すいた」

「おはようじゃないわよもうお昼よ」

「じゃーお昼ご飯」

「変わんないわね」

「当たり前(бвб) 」


やっぱり居心地がいいなぁー・・・
戻ってこようかな

優ちゃんと会うと辛いだけだし・・・


早く忘れなきゃ

もう一度初恋 13

カタン・・・・ガサゴソ


リビングから聞こえてくる音で目が覚める

時計を見るとまだ8時


泥棒!?やだ、どうしよう(汗)
け、警察に・・・

電話しようとスマホを見ると


(おはよう、今から行って片付けとくね)


「優・・・ちゃん?」


物音が止み


「・・・・陽菜起きたの?」

「うん」

急いでドアを開けると
懐かしく眉をハの字に下げた優ちゃんがいて

「ごめんよ、起こさないように
静かにしてるつもりだったんだけど(;´-∀-)」

「大丈夫昨日早く寝たから
それよりこんなに早くからどうしたの?」

「今日お昼から出かけなきゃいけないから
少しでも早く初めたほうが沢山片付けられるかなーて(;´-∀-)」

「ゆっくりでいいのに・・・」

「え?」

「あ、でも秋元さんはいいの?」

「才加?才加は昨日ご飯食べて夜に帰ったよ」


泊まらなかったんだ・・・・
何処かホッとしてる自分がいる

まあ、泊まらなくてもそう言う事は出来るんだけど・・・


でもそんなに早く片付けちゃいたいのかな・・・
なんかショック

だから邪魔してやるんだから


「ねえ、朝ご飯食べたの?」

「食べて来たよ」

「陽菜お腹すいた」

「こっちは勝手にやってるから食べなよ」

「優ちゃんが作ってよ(бвб)」

「・・・・・・・」


いきなり我儘すぎたら嫌われちゃうかな(汗)


「仕方ないなー何があるか冷蔵庫あけていい?」

「断らなくても全部使ってくれていいから」

「・・・・殆ど何もないじゃん」

「作り置きが冷凍庫にある」

「それはおばさんが作った料理でしょ」

「そうとも言う(бвб) 」

「一人暮らしをしたいなら自立しなきゃダメだよ
自分で料理して自分で掃除もしなきゃ」

「陽菜が出来なくったって出来る人を見つければいいんでしょ」

「そうだけど・・・旦那さんには仕事があるんだから
全部できないでしょ」


優ちゃんが旦那さんになってくれたらいいんじゃん・・・


「じゃー優ちゃんが教えてよ」

「私?」

「ママからくれぐれもよろしくって言われてるでしょ」

「そうだけど・・・・」

「嫌!ならいいけど・・・・」

「別に嫌じゃないけど、時間も会わないし
陽菜だって私とばかり会ってたら彼氏できないよ」

(陽菜は彼氏なんて・・・)

「え?なにごめん聞こえなかった」

「陽菜は・・・陽菜は優ちゃんが好き!
昔フラれたけど・・・・ずっと好きだった」

「はる・・・な」

「優ちゃんはなんとも思って無いってわかってる
でも好きでいるのは陽菜の自由でしょ
だから・・・・好きでいる事を拒否しないで!」

「・・・・・・・」

「あ・・・気にしないで、学生の頃優ちゃんだって
陽菜に好きスキ言ってたじゃん
あれとおんなじだって思ってくれていいから」

「そんなふうに思えないよ」

「だったら、今の言葉忘れて!
ね、今まで通り友達でいよう」

「無理だよ・・・・」

「やだ、もう会わないとか言わないで(涙)」

「どうして陽菜は・・・・」

「え、優ちゃん・・・・?」


なんでそんな辛そうな顔してるの?
そんなに陽菜が邪魔?


「ヤダヤダ、嫌いにならないで(涙)」

「嫌いになんてなれるわけないでしょ!」

「どういう・・・意味?」

「ごめん・・・待ってくれるかな」

「え?」

「ちゃんとするまで会わない方がいい」

「わけわかんない、ちゃんと分かるように説明してよ」

「ごめん今はまだ言えない
片付けも出来ないや・・・ごめんね」


謝ってばっかり


「ちょっと、優ちゃん(汗)」


そう言うと出しかけの分だけどパパっと片付け
部屋を出て行っちゃった・・・


やっぱり言わなければよかった・・・
陽菜またフラれたって事?
二回目じゃん

三度目の正直・・・・あるのかな

もう一度初恋 12

「お先です」

「あ、小嶋さん今日の合コン・・・」

「ごめん当分無理かも」


早く帰って優ちゃんが来るのを待ちたいから

なのに


(ごめん今日は残業になったからいけないや)

《陽菜も遅いから丁度よかった》


張り切って帰って来たから時間が沢山余っちゃう

はぁ・・・・
録り貯めしてあるドラマでも見よう


次の日


(今日は才加が来るからいけないや)

《気にしないで》


そうだよね・・・・
恋人は秋元さんだもんね


昔は優先順位の一番に陽菜がいたと思う
これはうぬぼれでも何でもない

だって断られたのはあの時が初めてで・・・

どんな我儘も聞いてくれていたから


だから勘違いしちゃったんだろうなー・・・


はぁ・・・・
昨日の続きみよーと(бвб) 


少しずつでも片付ければいいじゃん!と思うかもしれない
でも何もしない方が一日でも・・・ううん
一時間でも長くここにいてくれるでしょ?

だから何もしないの!



明日は土曜日

きっと泊まるんだろうな秋元さん・・・・


「・・・・・・・もうやだ!寝る」


誰に宣言してるのかわかんないけど
そう叫んでベッドへ入り目を閉じても
こんな早くに寝れるわけがなく

また考えてみる


どうしてまだ好きなんだろう

優ちゃんにはちゃんと彼氏がいるんだよ!
陽菜の事なんて友達か幼馴染としか思ってないんだよ!

何度も何度も自分に言い聞かせて来たのに

好きと言う気持ちを抑える事が出来ない


「どうすればいいの!」

「優ちゃん・・・・・・」

「優ちゃん好き!」


なんか昔と反対になっちゃった

昔は優ちゃんの方が陽菜に好きスキ言ってきてたのに・・・

そっか、友達でも好きって言っていいんだ
そうだよ、あんなにベタベタして来てたのは
友達としてだったんだから
今陽菜がしたっておかしくないよね?

決めた!陽菜の気が済むまで甘えてやるんだから!


そう思ったら一気に気が楽になってあっという間に夢の中へ


その日の夢は

学生の頃のように優ちゃんが陽菜に引っ付いてきて
もう、やめてよね!と嬉しそうに言う陽菜いた




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