わんわん警察 Y-26

今日は待ちに待った火曜日

くまちゃんとの浮気は・・・・・一度だけ
今日まで我慢しようと思ったんだけどつい・・・

無意識のうちにしてたっていうか・・・・

ううぅぅ・・・・にゃんにゃんゴメンよ


「変身したらすぐ起こしてぜ」

と昨日のうちに行っておいたから

仕事から帰ってきてすぐにいつもの場所に行き丸まって眠りにつく


「優ちゃん・・・・優ちゃん」


ふわぁぁ・・・・よく寝た


「ワン・・・・(あれ)・・・ワウン(にゃんにゃん?)」

「1時間ほど寝てたけど変わんなかった・・・」

「クゥ〜ン・・・・・(まじか(泣))」


もう一度寝たらもしかしたら・・・・また丸まって寝ようとしたら


「先にご飯食べちゃおう
人間の御飯作っちゃったから明日に回すね」


そう言って犬の俺様専用のドックフードを
下のお皿に入れてくれたから
仕方なく犬食い・・・・


「今日は変わんないのかな」

「ワンワン(怒)」


それは困る

今日まで我慢したんだぞ
俺のあそこは爆発寸前なんだからな!!


「明日にお預けだね」

「ワウワウ」
(まだわかんないだろもう一度寝たら変わるかもぜ)


ご飯をさっさと食べ終え
自分の場所でまた丸まり目を閉じる


どれくらい寝たんだろうテレビの音で目が覚めると
俺の横でソファーにもたれ寝てるにゃんにゃん

自分の手を見ると・・・・・・犬のままじゃん・・・・

もしかしてもう人間になれないのか?
いや、こんな事たまにあるじゃないか
それがたまたま今日だっただけで・・・

うん、きっとそうだ
今日は諦めて明日にしてもらおう


起きろ!て言う意味を込め
にゃんにゃんの顔をペロペロ


「んん・・・・・・」


ゆっくり目を開け少し悲しそうな顔をするにゃんにゃん


「お風呂入ろっか」

「ワン(入ってやるぜ)」


「明日お休みだからゆっくり寝て散歩行こうね」

「ワンワン!(走り回ってすぐ寝て人間になるぜ)」



でもその計画は叶わなかった

だって・・・・・



「今日も雨で行けないね」

「クゥ〜ン・・・・」


昨日の朝からすごい風が吹いていて
帰る頃にはすっごい雨が降っていて
駐車場からマンションへ入るまでの間だけでずぶ濡れ

その雨が止まずに今もずっと降ってる

仕方ないから夜のために体力温存しておくか


朝昼兼用のご飯を食べ
とり溜めた録画を見るにゃんにゃんの横に寄り添い
また、ゲームをするにゃんにゃんの膝に寝ころぶ

「あ、今弱くなってる(бвб) 」


雨が弱くなった時を見計らい買い物に出るも
またまたキツくなりマンションに入るまでにびしょ濡れ

「仕方ない先にお風呂に入っちゃお」


犬のまま入ったって人間になったとき
またお風呂に入らないと嫌がるくせに・・・


だが濡れたままだと部屋が汚れるからって
絶対に入れてくれないし仕方ないか・・・・

一緒にお風呂に入ってにゃんにゃんの裸を見たら
ムラムラが頂点に達し抑えることができなくなった俺

ペロペロ


「ちょっと、止めなさい(汗)」


「ハァハァハァ・・・・」

にゃんにゃんのアソコのニオイに興奮マックスの俺

犬のままにゃんにゃんの中に・・・・・



頑張ってもそこに届くわけがなく・・・・
にゃんにゃんの足に捕まり必死に腰をふる俺


「ハッハッハッ・・・・・・・ハァ・・・・」


俺が達するまで振り払わずされるがままだったにゃんにゃん

我に返り怒られると思い後ずさりしようとしても
湯船にぶつかりそれ以上下がれず
アウアウしていたら


「もういいの?大丈夫?」


凄く優しい顔をして俺の頭を撫でてくるからゆっくりにゃんにゃんを見たら
にゃんにゃんのきれいな足が俺の爪のせいで・・・

「クゥ〜ン(ごめんよ(涙)」

「これくらい大丈夫だから・・・・
優ちゃん頑張って我慢してたもん仕方ないよ」


「クゥ〜ン・・・・・」


なんて最高の女なんだ、早く人間になって
にゃんにゃんも気持ちよくさせてあげたい


だからそこからはひたすら我慢して賢くお風呂から上がり
御飯になる前に寝る

だって昨日の人間のご飯を食べないといけないだろ


「優ちゃん・・・・・・ご飯食べよ」


「ウワァァァフ・・・・ワン・・・・」


やっぱり犬のままで・・・・


「クゥ〜ン・・・・・(ダメなのか、もう人間いなれないのか)」


「陽菜よーく考えてみたの」

「・・・・・・」

「優ちゃんが人間に変わらない夜って
雨か曇ってる日だったと思う」

「ワウ?(どういうことだ)」

「きっとねお月様の明りがないと優ちゃん人間になれないんだと思う」

「ワン!!」


そうだよ、だから昨日も今日もダメだったんだ
俺様がお月様にお願いしたから
お月様が出てないとその力も効かないんだ


「ワンワンワン!(そうだ、絶対そうぜ)」


だったら太陽さんにもお願いしたら昼間も人間でいれるのか?
雲さんや雨さんにもお願いしたらずーと人間でいれるのか?


確かお月様はスーパームーンの時だったよな
じゃー太陽と雲と雨にはいつお願いしたらいいんだ?

わんわん警察 H-25

優ちゃんがそんな事を考えていたなんて思ってもいなかった

たまに見る動物番組で寿命の話してたかな・・・
そうだよね優ちゃんは犬だから長く生きても後・・・・

だからって優ちゃんの子供を産むのはやっぱり勇気がいる
それにいつ人間になれなくなるかもわからないし・・・・

死にたくない!
一緒に年をとっていきたいって!
涙を流しながら叫ぶ優ちゃんに胸が苦しくなる

何も言えないでいると

寝ると言って寝室へ行ってしまった

すぐ追いかけることが出来ないでいる陽菜は卑怯なのかもしれない


「はぁ・・・・どうしたら良いんだろう・・・」


とりあえず


「優ちゃんお風呂入ろ・・・・・・そのままだったらベットで寝させないから」


ガバっと起き上がると部屋の端へ行き壁に向かい丸まって寝る優ちゃん


「そのまま寝る気」

「どうせ犬に戻るから一緒だろ」


そうだけど・・・・はぁもう


「一回だけ(бвб)」


すごい速さで陽菜の前まで来てコクコク頷いてる優ちゃん
もちろんしっぽはブンブン音がなるんじゃないかっていうくらい・・・
ていうか床にあたっててバシバシなってるんだけどね(笑)

犬だから単純なのかな
もう機嫌が治って

「お風呂はいろぜ(-∀-`)」

「そのまま寝るんじゃなかったの?」

「そんなこと言ってない、犬に戻るから一緒って言っただけだぜ♪」


確かにそうだけど・・・・やっぱり賢いのかな?


「今日したら休みの前の日になるまでしないけどいい?」

「う〜ん・・・・いつ休みになる?」

「水曜日に1日休みもらってる」

「今日が水曜日って何回寝るんだ?」


そっか曜日とか日付はわかんないか

「今日入れて5回寝たら水曜日」

「だったら五回目の時だな・・・・わかった我慢する」

「ふふふ、いい子(бвб)」


頭を撫でてあげると気持ちよさそうな顔をして抱きついてきたから
抱きしめ返してあげた


そして待ちに待った火曜日の夜


陽菜はそんなに待ってないけど・・・・・




優ちゃんは人間に変わらず
水曜日の夜も犬のままだった

わんわん警察 Y-25

人間の姿で寛いでいたらいきなり麻里子がやってきて
俺が犬のゆっぴー・・・コホン、優子だって言うのを当てやがった


と思ったらいつもの冗談だったらしく
親戚の子供ということになったんだけど

「俺様は立派なオトナだぞ(怒)
あいつ犬の時に噛んでやるからな」

「そんな事したら一緒にいれなくなるからやめて」

「わ、わかったぜ(汗)」

「今日は誤魔化せたけど今度あったら絶対に誤魔化せないよどうしよう(汗)」

「にゃんにゃんがちゃんと確認せずにドアを開けたからだろ」

「むぅ・・・・陽菜が悪いって言うの(怒)」

「いや・・・・悪いとは・・言ってないけどだな(汗)」

「優ちゃんが声だすからいけないんでしょ(怒)」

「それは・・・・悪かったぜ・・・」


にゃんにゃんに怒られると弱い俺
しっぽが丸まってるのがわかる

「怒ってゴメンねみみ垂れてるよ」

そう言って頭を撫でてくれるからすぐ元気になる俺(-∀-`)

「早くお風呂に入ってしようぜ♪」

「・・・・・・・明日からゴールデンウィークだから
仕事休みじゃないよ」

「まじか・・・・」

「疲れたら嫌だからしない」

「何でだよ!いつもは仕事の日でもしてるだろ(怒)」

「去年大変だったの覚えてないの」

「GWとか休日とか俺はわかんない」

「それもそっか、犬だから暦とかわかんないよね」

「俺、体力には自信あるからどんなに荷物が多くても大丈夫ぜ(-∀-`)」

「陽菜が疲れるの!」

「何でだよ、夜も仕事も必死に動いてるのは俺だけだぞ
にゃんにゃんは俺の下でアンアン喘いでるだけだし
仕事だって突っ立って命令してるだけじゃんかよ」

「・・・・・・そんなふうに思ってたんだ」

「へぇ!?」

「優ちゃん1人に働かせて悪かったわね
つったって!命令してるだけなら麻里子も出来るし
後輩にだって出来るから陽菜が居なくてもいいよね」

「いや、俺そんな事言ってるんじゃなくて(汗)」

「明日は麻里子についてもらって、陽菜は休むから!」

「む、無理!俺にゃんにゃんの命令しか聞かないぜ」

「人間の言葉がわかるんだから陽菜じゃなくてもいいってことだよね
今までは優ちゃんのわがままで陽菜の言うことしか聞いて無かったんだよね
そうか、陽菜にエッチなことするために一緒に居たかっただけか・・・
信頼関係ができてると思ってたのに・・なーんだそうだったのか」

「ちがーう”!エッチいことは野生だからどうすることも出来なくて・・・
でもにゃんにゃんが好きでにゃんにゃんのそばにいたくて
にゃんにゃんだから・・にゃんにゃんが俺のことを
犬の俺のことを信じてくれてると思えたから仕事も頑張ったし
にゃんにゃんに褒めてもらえるように毎日必死で仕事してたんだ
でも人間になれて・・・少し犬だけど
諦めてたにゃんにゃんとのエッチが出来て
でもまたいつ犬のままになるかわかんなくて・・・・
少しでもにゃんにゃんに触れていたいって思うのが悪いのかよ!
うぅぅぅ・・・・(涙)」

思ってたことを全部言ってしまった

「ゴメンね・・・・優ちゃんも不安だったんだね」


そう言って抱きしめてくれるから
しっかり抱きついて


「俺、人間のままでいたいよぉー
だって犬だったら先に死んじゃうんだぜ
後10年も生きられないんだぜ
それに4・5年したらおじいさんになるんだぜ
そんなの嫌だ(泣)」


犬の寿命は短いってテレビで言っててショックだった
だったら少しでもにゃんにゃんの記憶に俺を残しておきたいって
思いついたのがエッチだったんだ
いっぱいしたら俺がいなくなっても忘れないだろ?

他のやつとした時・・・嫌だけど
優ちゃんのほうが気持ちよかった
て、思ってほしいじゃん
その度に思い出してほしいじゃん


「そんな事しなくても優ちゃんのこと忘れたりしないよ」

「へぇ?なんでわかったの・・・」

「全部声になってるから(笑)」

「でも、でも俺が死んで好きなひと出来たら
絶対に忘れるだろ」

「どうしたら信じてくれる?」

「・・・・・・・俺の子供生んでくれ」

「・・・・・・・・・・・・・・それは・・・・ごめん」

「やっぱり忘れる気だろ」

「違う、だって・・・・もし犬だったらどうする?
陽菜世間からどう思われると思う」

「犬とヤッた人間」

「ありえないじゃん」

「でも今人間だから・・・」

「みみとしっぽがある人間はいません」

「み、みとしっぽがある方が可愛いだろ(汗)」

「研究材料にされたらどうするの」

「そんな事俺がさせない」

「先に死んじゃうのに?」

「うぐっ・・・・・うぅ・・・死にたくない
にゃんにゃんと一緒に年取って行きたい・・・・」


くそ・・・なんで人間は涙なんて出るんだよ
俺様が弱い犬みたいじゃんか(泣)

「寝る」


それだけ言ってベットに潜り込んだ




reciprocate 後篇

手術室の前で祈りながら待った


「先生」

「手術は成功しました」

「ありがとうございます」

「意識が戻るまで個室に入ってもらいます」


そんな事したらまたお金がかかっちゃう


「出来れば大部屋で・・・」

「小嶋さん、今はお父さんの為にベストの状態を維持したいので」


そうだよね命の方が大事だもん
陽菜が我慢すればいい事だから


「よろしくお願いします」


どれだけ請求が来るんだろうか・・・


「小嶋さんこの病院は完全看護なので
お家に帰って頂いても大丈夫ですよ」


様子を見に来た看護師さんにそう言われたけど
店を開けようにも粉の調合はお父さんしか出来ない
陽菜がしたって同じ味は作れないからきっと売れない


それに家にいると光熱費もかかるし・・・・


「あのう、いつ退院できますか」

「先生に聞いてみないとわかりませんね」

「・・・・・・大体でいいんですが請求はどれくらいかかりますか」

「それも私には・・・・先生に伝えておきますので」

「よろしくお願いします」


消費者金融に借りるにしても
返せる当てもない

やっぱり陽菜が・・・・

初めては好きな人としたかったな
もう遅いけど・・・・

そういうお店のチラシを何枚か集めて来た
どこがいいのかわからないけど
なるべくお金がもらえるお店にしよう

そのチラシを見ながら眠ってたみたいで
目が覚めたら借り請求書と書かれた手書きの紙が
綺麗に重ねられたチラシの上に乗っていた


「・・・・・0円?」


貧乏だからってバカにされてるの(怒)

破り捨てようと手に取ると紙は二枚あって
二枚目には


”治療費は20年前に頂いています”


どういう事?


お父様のおかげで私の母は苦しむことなく逝く事が出来ました
他人に優しくされたのは初めてで
お礼も言わず逃げてしまい申し訳ありませんでした
母が亡くなってからお礼を言おうと店の近くまで
何度もお伺いしましたがまだ幼かった私は声をかける事が出来ずにいて
孤独になった私は遠くの施設に預けられることになり
行く事が叶わなくなりました

お父様のおかげで私も人を助けたいと思うようになり
医師を目指し先日この病院に赴任してきた所でした

そのタイミングで小嶋様が少し離れたこの病院に運ばれてきたのは
やはり運命と言うほかないと思い全身全霊をかけ治療していく所存です。

担当医 大島優子


あの時の男の子・・・・女の子だったんだ
それに小さい子供だと思ってたけど・・・いくつだったんだろう


コンコン・・・・

「小嶋さん体温測りますね」

「あのう、大島先生は」

「昨日夜勤だったのでもう帰られたと思いますよ」

「住所教えて頂きたいんですが」

「それは出来ませんよ(笑)」

「ですよね・・・・」

「先生は今おいくつなんでしょうか」

「確か・・・・今年30歳になるって言われてたと思いますけど」


陽菜と同い年じゃん
うそあの時どう見ても小学生には見えなかったのに(汗)

「先生夜勤の帰りには
いつも同じカフェでコーヒーを飲んで帰られてるから
もしかしたらまだいらっしゃるかも」


その場所を聞き病室を飛び出る


目の前に行くと丁度お店から出て来たところで

「はぁはぁはぁ・・・大島先生(汗)」

「小嶋さん・・・どうされたんですか
まさか容体が急変・・・」

「大丈夫です、あのう・・・・手紙読みました」

「あぁっ・・・・そう言う事なので気にせず
完全に治るまで病院にいて下さい」

「でも、薬ひと箱とたこ焼きだけしか差し上げてないのに」

「あの頃の私達には今の治療費なんかより
もっともっと高価な・・・価値のあるものでした
何も食べれなかった母がたこ焼きを食べ
美味しいね、と微笑んだ顔が今でも忘れられません」

「でも・・・・・」

「もし気が咎めるならそうだな・・・・
今度私に陽菜さんの焼いたたこ焼きを食べさせてください」

「私が作るのは美味しくないと思います」

「気持ちがこもっていれば美味しくないものなんてありませんよ」

「わかりました、もし今日予定が無いのならお店に帰って作りますが」

「それは嬉しいですね是非(-∀-`)」







「陽菜、お父さんが来るんだから早く起きて」

「う〜ん・・もう少し・・・」

「だーめ、ほら早く」

「優ちゃんが昨日なかなか寝かせてくれなかったからでしょ」

「仕方ないじゃん学会とか興味ないのに無理やり行かされてさ
それも日本じゃないからすぐ帰って来れないし
一週間ぶりの陽菜の身体だよ、止まるわけないじゃん」



あの日・・・たこ焼きを焼いてあげた日にいきなりプロポーズされた

店に来ていた時ずっと陽菜を見ていたらしい

自分がもっと立派になって
次に会えたらプロポーズしようと思ってたんだって


「ねえ、陽菜がOkしなかったらどうしてたの」

「決まってるじゃんOkしてもらうまで毎日プロポーズしてたよ」


何故かあの日、
少ししか話したことのないこの人のプロポーズを二つ返事で受けた陽菜

陽菜の直感がこの人しかいないって訴えかけて来て
人柄も性格も何も知らないのにお願いしますと返事をしていた


お父さんは相変わらずあの場所で今日も元気にたこ焼きを焼いている
そして相変わらず困ってる人にはタダでたこ焼きをあげていた

ただ違うのは家が綺麗になり、
お店らしくなってちゃんとした椅子やテーブルも置いている

そして

「お父さんお母さんいらっしゃい(-∀-`) 」

パパも新しいパートナーを見つけ
二人で店を切り盛りしている


陽菜に幸せをくれた優子に
ありったけの愛情を注いでいこう

それが陽菜からのreciprocateだから


おしまい
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reciprocate 前篇

陽菜のパパはお人よしすぎる


ママは陽菜が赤ちゃんの時に死んじゃったらしく
男手ひとつで育ててくれたパパ

ドアもない四畳半の小さなたこ焼き屋だけど
贅沢さえしなければ二人で暮らしていけた

でもパパはお人よしだから


「まて、チビ」

店の前の薬局屋さんから飛び出してきた小さい男の子
おじさんに掴まり盗んだ何かを取り返されていた

「警察に突き出してやる」

「洋さん落ち着けってまだ小さい子供じゃないか」

「泥棒は泥棒だ」

「ボウズ何を取ろうとしてたんだい」

「・・・・・・・」


俯いて何も言わない男の子


「誰か病気なのか」


「お母さん・・・・」


小さな声でそう囁く


お父さんはポケットからお札を出し洋さんに差し出すと


「これで足りるか」


「こんなやつに買ってやるのか」


「今日だけだ」


後ろを振り向くと


「陽菜2パックもってこい」


言われるままたこ焼きを詰め袋に入れ渡すと
そこに薬の箱をいれ


「もう泥棒はするなよ」


コクンと頷くと何も言わずに走って逃げていった


「お礼ぐらい言えばいいのに」

「良いじゃないか、さあ仕事仕事」


そう言うとまたたこ焼きを焼き出した


それからも貧しい人がいればタダで食べさせてあげてる

だから毎日沢山焼いてるのに全然潤わない生活

それでも楽しそうに焼いてるパパの後ろ姿を見るのが好きだった




「陽菜はいい加減に結婚しなさい」

「だっていい人いないんだもん」


パパよりいい人なんてこの世にいないと思う
だから陽菜はずっとパパといるよ

そう思ってたのに


バタン!!

家の中で昼食を作っていたら

大きな音がしたから慌ててお店に見に行く



「パパ、何か倒した?・・・・パパ何処」


背が高いはずなのに姿が見えなくて
いつも立って焼いてる場所を覗いたら


「パパ!!」


コンクリートの上に仰向けで倒れ頭からは血が流れていた


救急車で運ばれた病院で傷の手当と検査をしたら
頭に腫瘍が見つかった


「父を助けて下さい」

「今日は脳外科の先生が学会に行かれていてなんとも言えませんが
この腫瘍が血管を圧迫して意識を失われたんだと思います」

「手術できるんですか」

「あの先生なら出来るとは思いますが
手術には高額な費用がかかりますよ」

「いくら位いりますか」

「100万は見ておいて下さい
まあ、高額医療請求をすれば半分は戻ってくるとは思いますが」


そんなお金うちにあるはずがない

病室へ戻りパパの手を握りゴメンと言いながら泣いた
泣きつかれて眠ってたみたいで
外は暗くなっていた


「帰らなきゃ」


店をそのままにして出てきたからもしかしたら泥棒が入ってるかもしれない
まあ、取られるものはなにもないけど


「パパまた明日来るね」


帰ろうとした時白衣を着た人が病室に入ってきた


「小嶋さん」

「はい」

「担当医の大島優子です」


立っていたのは陽菜より背の低い女医さんで


「お父さんの腫瘍は一刻を争います
明日手術をしましょう」

「ありがとうございます
でもうちにはお金が無いのですぐには無理です
この入院費だけでも精一杯なので」

「お金はなんとでもなりますが命はひとつしか無いんですよ」


何かを売ってお金を作ろうにもお金になるようなものはなにもない
家は売れない、だってパパの生きがいだから

あ、一つだけ売れるものがあった
まっさらな・・・・・・


手術が成功したら・・・・



「・・・・・わかりました、よろしくおねがいします」



はぁ・・・・好きな人1人くらい作っておくんだったなぁー
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