東京に戻ってから二日後の夕方優子が目覚めたらしいと連絡があった

すぐに駆け付けたっかったけど
今取り掛かっているのを置いていくことができず
会社に残り徹夜で仕上げ
朝電源が入ると同時に会社を出て家に帰り
シャワーを浴びて身支度を整え車に飛び乗る

途中どうしても眠くなり1時間だけ仮眠

優子の家に着いたのは11時を過ぎていた

そこにいた優子は顔色が良く元気そうで
何も変わっていなかった

ただ一つ、記憶がないのを除いては・・・・


どなたですかって言われたとき
何を言ってるのかわからなかった

放心状態の陽菜をおばさんが察したのか優子を部屋へ戻し
居間で説明してくれた


記憶がない?
陽菜のことだけじゃなくおじさんおばさんのこともわからない?

これって・・・・チャンスじゃん

いつも妄想していたことをあたかもやっていたかのように説明し
優子を東京に連れて帰ることに成功

記憶がないせいか車の中で話が弾む
いつもだったらこんな風に話してくれなかったから嬉しくて
どんどん出てくる嘘

そして

「にゃんにゃん」


優子の声で久しぶりに聞くにゃんにゃんという言葉になつかしさがあふれ出す

もう引き返せない

記憶が戻り陽菜の事が嫌いだったころに戻るまでは
幸せに浸っていたい

たとえその後部屋から出て行ったとしても・・・・


東京に着いたらバイト先へ行くという優子に又嘘をつく


「それなら陽菜が電話しておいたからもう行かなくても良いよ」


とっさに出たうそ、連絡先は知ってる
優子のことは全部把握してるから

食い下がる優子に遊ぶお金だけ稼いでいたと言った
まだ倒れるかもしれないから陽菜が全部出すとも


途中SAに入り軽食をとっている間に
バイト先に電話をし事故にあったため辞めると伝えた

多分携帯に連絡が来てたはずだけど
壊れてるから何も残っていないはず
壊れてくれてありがとう

優子は自分でって言ってるけど機械音痴なの知ってるよ
だからマンションに帰る前に携帯屋さんに寄って
新しい携帯を購入していたらマンションに着いたのが20時過ぎ


Uberを頼むと言ったら作ると言ってくれたけど材料がない

次の日買い物に行くというからいつものように一緒に行くとまた嘘をつく

優子の手料理が食べられるなんて夢みたい
何度もチャンスはあったのに断り続けたのは陽菜自身

だって一度甘えてしまったら我慢できなくなると思ったから


だからかな記憶のない優子に甘えて歯止めが利かなくなり

一緒に寝ていたと言って寝室に入れ
毎日眺めていた優子からのプレゼントを見せたのは・・・


陽菜が中二、優子が小五の時
陽菜の部屋に久しぶりに笑顔でやってきた優子
初めてお小遣いをためたお金で買ったかわいい猫の絵が描かれたハンカチを
誕生日プレゼントだと言ってくれた

その時たまたまいた友達がダサいと笑ったとたん
私の手からハンカチを奪い取り走って部屋から出て行ってしまった

友達の手前追いかけ無かったことを後悔したのは

夕食の時お母さんから優子が泣いて帰っていったと聞いた時だ


それ以来陽菜の誕生日に優子からプレゼントをもらう事は無くなった