10年桜 エピローグ

優子




「また行きたいんでしょ」

「どうしてわかっちゃうのかな(;´-∀-)」


いつもの公園のベンチに座り二人でウックリ中に
突然言ってきた陽菜

「わかるよ、優ちゃんの考えてる事は
何でもわかっちゃうんだから」

「陽菜には敵わないや(;´-∀-)」

「ちゃんと帰って来てよ」

「もちろん、陽菜がここにいる限り
私の戻ってくる場所はここしかないから」

「そういう意味じゃなくて・・・」

「わかってる、陽菜がそばにいてくれる限り
私は死なない」



陽菜は日本で看護師を続けているし

私は日本を拠点とはしてるけど
相も変わらず世界を飛び回っていた

ただし、危ない地域は控えていたんだけど
今の情勢を見てうずうずしてきていた所だった


ネパールで陽菜を見た時
幻を見てるんだと思った、で
いつまで引きずってるんだよ、ともね

でも陽菜はちゃんとそこにいて・・・・・

顔を見て仁王立ちで号泣してしまったのはみーちゃんには内緒


一人だからいつもは安くて汚いゲストハウスに泊ってるけど
陽菜が泊まるとなると話は変わってくる

そのあたりで一番いいホテルを探すも
見つからなくて
借りていたレンタカーで30分都心部へ戻り
ツインの部屋を取った

あ、ちゃんとツインでもいいか聞いたからね(;´-∀-)

で、残した手紙を見せられて

ちゃんと優ちゃんの口から言って!と言われ

初めて告白したら

もっと早く言って欲しかったって怒られ

そしていいよ、って言ってくれてまた号泣したっけ



今は公園の見える陽菜のマンションに二人で住んでいる
もちろん恋人同士として


「もう桜も終わりだね(бвб)」

「あっという間だよね(-∀-`) 」

「そのあっという間の桜を陽菜は一人で10年間見て来たんだよ」

「えーと・・・ごめん・・・(;´-∀-)」

「だからその10年よりもっと長く
これからは二人で見ていこうね(бвб)」

「にゃんにゃん(。-∀-)」

「懐かしー呼び方(笑)」

「おばあちゃんになっても好きだからね」

「陽菜、やっと30歳になったばっかりなのに
おばあちゃんとか酷ーい」

「違うじゃん(;´-∀-)これから歳を重ねていって
70歳、80歳になってもっていう意味なの!」

「ふふふわかってる(笑)」

「大島さんをからかうのはやめて下さーい」


いたずらに笑う陽菜が愛おしすぎて抱きしめキスしようとしたら


「ここは日本なんだからダメ!」


だよね・・・・


「だから部屋に戻ろう(бвб)」


そんな甘い声と顔で見つめられたら大島さん爆発しちゃうよ(;´-∀-)


手をつなぎ立ち上がろうとしたら
ビュッと風が吹き桜の花びらが舞いあがる


「花びらたちが私達を祝福してくれてるみたい(бвб) 」

「そらそうでしょ、だって今日は陽菜の誕生日なんだから」

「そっかー・・・今日までありがとう
そしてこれからもよろしくね」


そう言って木を撫でる陽菜の後ろから
陽菜と桜の木を一緒に抱きしめた





おしまい

10年桜 8

「もうその手紙読むの勘弁してよ(;´-∀-)」


「陽菜あの時風邪ひいたんだからね!(怒)」


「何度も謝ったじゃんか」


「自分で思い込んで自分だけで解決しちゃうの
優ちゃんの悪い癖だからね!」

「だから今は全部相談してるでしょ(;´-∀-)」

「絶対?」

「う、うん・・・・」

「ほら、何か隠して一人でまた悩んでる」

「えーと、自分の中で決まってから相談しようかなって(;´-∀-)」

「決まったら相談なんて必要ないじゃん」

「そうともいう・・・・」

「はぁ・・・・」

「言うから嫌いにならないで(;´-∀-)」





約束の日から三日後
みーちゃんが病院にわざわざ手紙を持ってきてくれた

「仕事から帰ったらポストにこれが入っていて
自分になにかあったか、
陽菜が結婚したら渡してって書いてあるんだけど
すぐに渡さなきゃって思って、
でもスケジュールに陽菜今日夜勤の日だって書いてたから
家にも入らず持ってきてあげたんだから」


ありがとうと言う時間もおしくて
その場で封を切って読んだ


「つうっ・・・・(涙)」

「見てもいい?」


無言で手紙を差し出す


「優子公園に来てたんだね
どうして会わなかったんだろう」

「たぶんその日同じ夜勤の先生に送って貰ったから・・・
彼氏だと勘違いしたんだと思う」


どうして公園の前で降ろしてもらったんだろう・・・
少し考えればわかる事なのに

桜を見たいなんて建前で

もしかしたらもう来てるかもしれない・・・
一秒でも早く会いたかっただけだと思う


「これ切手貼ってないから
優子が直接ポストに入れに来たんじゃないかな」

「だったら陽菜の家のポストでいいじゃん」

「陽菜は家出てるでしょ実家だったらもっと時間たってたよ」

「そうだけど・・・」

「まだ日本にいるんじゃない?」

「いたとしても連絡取りようがないし
優ちゃんの事だからもういないかもしれない」

「弟子入りしたカメラマンの人だったら連絡とれるよ」


みーちゃんが就職したのは雑誌社だったから
コネを使い探し当ててくれていたけど
十年後に会おうって書いてあったし
こっちから連絡取ろうとするのも変だから
何も行動せずにいた



30分後


「今は別々に動いてるんだって
でも次に優子が行く国はわかったよ」

「どこ?」

「お昼の便でネパールに行ったみたい」

「ホテルわかるかな」

「フフフそう言うと思って聞き出しておいた(ΘωΘ) 」

「ありがとう、この御礼は・・・優子にさせるから」

「お土産は買って来てよ」

「買えたらね」



すぐ事務所に行って長期休暇を貰った

急には無理ですと言われたから
じゃー辞めさせていただきますって言ったら
渋々用紙を渡され
一週間以内でお願いしますって言われたから
丸々一週間取って次の日の飛行機の予約を入れた

もちろん優子が向かったのは観光地じゃなく
女が一人で行くには危険が伴う地域
ホテルもゲストハウスと呼ばれていて
値段は格安でこんな値段で泊まれるホテルって・・・・

怖かったけど陽菜が動かなければ
二度と会えない気がしたから
勢いで行ってしまったのかもしれない



空港からタクシーで一時間
コンクリートむき出しのホテルは冷たい感じがした


「どうしようかな」


ここで待っていれば戻ってくるはずだけど
外で待つのは怖い
かといって中にはフロントはなく
受付の窓口があるだけで
待つ場所もない・・・・

あたりを見渡すと食堂らしき小さな家があり
そこへ向かって歩いて行くと
中から人が出てきた

真っ黒く日焼けした精悍な顔立ちなのに
何処か可愛げの残る・・・



「優ちゃん」

「・・・・・にゃん・・・にゃん?」



目を丸くして驚く優ちゃんがそこにいた

10年桜 7

優子



「綺麗(-∀-`) 」


私の・・・私たちの為に咲いてくれたんじゃないかって思うほど
満開の桜に顔がほころぶ

きっと来てくれると何の確信も無いのに
思い込んでるおめでたい私


「でも朝はまだ寒いや」


残した手紙に時間を書くのを忘れたバカな私

でも一日中待つのもなんかいいよね


朝早くからといっても朝の弱いにゃんにゃんだから
そんなに早く来ないだろうと思い
九時前に公園へ来て懐かしい指定席に座る


「にゃんにゃん綺麗になってるんだろうなー
学生時代は綺麗可愛いと言う言葉が似合うほど
笑っている時は可愛くて・・・
ふっとしている時は綺麗で・・・・」

どんな時もドキドキさせられてたっけ

そんな昔を思い出しながら
桜の木を見上げていたら車の音がして

その方向に目を向けると懐かしい顔が見えたから急いで隠れた


「私、何で隠れたんだろう・・・」


戦場などで遠くを見ることが多かった私の目はすごく良くて

にゃんにゃんの笑顔とその向こうに見える男の人の顔が見えてしまった

そして耳までいいから困る


「おやすみなさい」


確かににゃんにゃんはそう言った


「また明日」


低い声でそう聞こえた


「なんだ・・・・彼氏いるんじゃんか・・」


結局この日を心待ちにしていたのは私だけだったんだ


拭っても拭っても流れて落ちる水滴


にゃんにゃんの顔をしっかり目に焼き付けたいのに
ぼやけて見えなかった


そして三日後、私はまた飛び立つ


十年前と同じようにみーちゃんに手紙を託して

10年桜 6

優子



入学試験の教室の一番前のドア側の席だった私

早く着き過ぎ教室には2,3人しかまだきてない

復習のためにノートを見ていたら
フワッといい匂いがして目線を上げると
ストレートの長い髪の女の子が通り過ぎようとしていて
目で追っていると2つ向こうの席に座った


「横顔綺麗・・・」


今まで見たことのない綺麗な顔立ちに
少しの間目が離せなかったんだけど

試験に集中しなくちゃと自分に言い聞かせ
また視線を下にうつす

試験が終わる頃にはそんな事も忘れ
入口近くだから一番に試験会場を出た



入学式の日

同じ中学の佐江とクラスが離れ
何なら同中の子が一人もいない教室にまたもや早く着き
話し相手もいないから
今度は入って来る子達を眺めていたら

見覚えのある横顔が通り過ぎ席に座った
私の席が前から四列目だったから匂いはさすがにしなかったけど
あの子だってすぐに分かった

絶対に友達になる!と心に決め朝と帰りの挨拶は絶対に欠かさず
懐に入るチャンスを狙っていたんだけど
中々スキがなくて・・・

ゴールデンウイークの一日だけでも会って貰えたらと思い
決死の覚悟で声をかけたら意外にあっさりとOKを貰えて
家にまで行く約束をしてしまった大島さんは空高く
飛んで行ってしまうんじゃないかって言うくらい浮かれていた


「優子ごきげんじゃん」

「アハッわかる(´-∀-)」

「気持ち悪い位ずーとニヤニヤしてるんだからわかるよ(笑)
どうせ小嶋さん関連でしょ」

「それしかないよね(-∀-`) 」


人と話すのが苦手なのか
小嶋さんから話しかけてるのを見た事がない

でも声をかけられると嬉しそうに話してるから
早く話しに行きたかったんだけど

タイプが全然違う私には共通の話題が思い浮かばなくて
やっと出た言葉が被写体になって下さいだった


そこからはとんとん拍子に仲良くなり
私の友達とも交流を深め
みーちゃんとなんて私よりも好きなんじゃないかって思うほど
仲良くなっていた

まあ、当たり前だけど
好きと言われたことは一度もない・・・

小嶋さん、大島さんからにゃんにゃん、
優ちゃん呼びになったのは夏休み中

私が小嶋さんの家に初お泊まりした日だったかな

もちろんベッドの下に布団を敷いて貰って寝たんだけど
寝息を聞いてるだけで心臓がバクバクしちゃって
殆ど寝れなかったのはいい思い出

奇跡的に三年間同じクラスで
朝一番におはようと言いたいがために毎日家まで迎えに行った

帰りも送って行きたかったけど
送る理由が見つからず
仕方なく駅近の公園のベンチで毎日必死に話題を作り
少しでも長くいれるように頑張っていた

その間何度も告白しようと思った
でも私達は女の子同士だから

小嶋さんに訪れる未来の幸せを私が奪う事は出来ないから
一番の親友でいようと自分に言い聞かせた

そしてその関係は大人になっても続くものだと思っていたけど

高校二年生の時ある写真を見て衝撃を受けその道に進みたくて
自己流で勉強しながらコンタクトを取り続け
それが叶う事になった時
小嶋さんとの関係をこのまま続けていくのは難しく
諦めなければいけないんだと気づいた日、一晩中泣いた


でも私は弱い人間だから

保険を残す


少しでも私の事を好きだったのなら
あの手紙でわかってくれたはず・・・・

約束の日に来てくれるはずだと・・・・



そして約束の日

10年桜 5

結局付き合おうと思う人は現れないまま


約束の日の前日



約束の日は休暇を取っていたんだけど


「夜勤代わって頂いてすみません」

「早く帰ってお母さんを安心させてあげて」


伊豆ちゃんのお父さんが倒れてお母さんが不安がってるから
誰か代わって欲しいって後輩や同期の子に聞いてたんだけど
誰も代われる子がいなくて・・・

夜勤あけだったら朝帰れるから休みと同じだし
今住んでるのは公園の近くのマンションで
陽菜の部屋から公園のベンチを見る事が出来るから
もし姿を現したらすぐ降りていけるって
思ったのがいけなかったのかもしれない
休んでいればあんなことにはならなかったのに・・・



「あれ、小嶋さん今日休みだったんじゃないの?」

「夜勤代わってあげたので今から帰ります」

「そうなんだ、俺も夜勤明けだから送って行ってあげるよ」

「そんな・・・悪いのでいいです」

「朝っぱらから変なことしないって(笑)」

「夜だったらするんですか・・・」

「いや、そういう意味じゃなくて(汗)」


科は違うけど年齢が近いせいか
結構仲良くなった三浦先生
少しだけど気になっていたから・・・・



「ふふふ嘘です、お願いしちゃおうかな(бвб) 」

「門の所で待ってて車回してくるから」

「駐車場まで行きますよ」

「そういう所好きだなー」

「口が上手いですよね」

「結構本気なんだけどなぁ(笑)」


いい先生だと思う
誰に対しても態度を変えないしみんなに平等だし
人間としては好きだけど一歩踏み出せない自分がいた



もし来なかったら・・・・
踏み出さないといけないのかもしれない・・・



公園に差し掛かった時
なんとなく桜の木を見たかったから


「ここでいいです」

「え、向こうのマンションでしょ?」

「公園横切って行くので
ありがとうございました」

「じゃーまた明日」

「はい、おやすみなさい(笑)」


朝帰りにお休みなさいって変な感じ(笑)


「あ、花びらが舞ってる」


今年は暖かくて桜の開花も早かったから
公園の桜は満開だった


「おはよう、今日はよろしくね」


ベンチの横に立つ桜の木に声をかけマンションへ帰る


「一時間ほど寝ようかな」


目覚ましをかけて仮眠を繰り返し
何度も公園を見下ろすけどそこに誰も現れなくて・・・

もしかしたらベンチを間違えてるのかもしれないと思って
四時ごろから公園に降りて座って待ってたのに

優子が現れる事は無かった

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