結局付き合おうと思う人は現れないまま


約束の日の前日



約束の日は休暇を取っていたんだけど


「夜勤代わって頂いてすみません」

「早く帰ってお母さんを安心させてあげて」


伊豆ちゃんのお父さんが倒れてお母さんが不安がってるから
誰か代わって欲しいって後輩や同期の子に聞いてたんだけど
誰も代われる子がいなくて・・・

夜勤あけだったら朝帰れるから休みと同じだし
今住んでるのは公園の近くのマンションで
陽菜の部屋から公園のベンチを見る事が出来るから
もし姿を現したらすぐ降りていけるって
思ったのがいけなかったのかもしれない
休んでいればあんなことにはならなかったのに・・・



「あれ、小嶋さん今日休みだったんじゃないの?」

「夜勤代わってあげたので今から帰ります」

「そうなんだ、俺も夜勤明けだから送って行ってあげるよ」

「そんな・・・悪いのでいいです」

「朝っぱらから変なことしないって(笑)」

「夜だったらするんですか・・・」

「いや、そういう意味じゃなくて(汗)」


科は違うけど年齢が近いせいか
結構仲良くなった三浦先生
少しだけど気になっていたから・・・・



「ふふふ嘘です、お願いしちゃおうかな(бвб) 」

「門の所で待ってて車回してくるから」

「駐車場まで行きますよ」

「そういう所好きだなー」

「口が上手いですよね」

「結構本気なんだけどなぁ(笑)」


いい先生だと思う
誰に対しても態度を変えないしみんなに平等だし
人間としては好きだけど一歩踏み出せない自分がいた



もし来なかったら・・・・
踏み出さないといけないのかもしれない・・・



公園に差し掛かった時
なんとなく桜の木を見たかったから


「ここでいいです」

「え、向こうのマンションでしょ?」

「公園横切って行くので
ありがとうございました」

「じゃーまた明日」

「はい、おやすみなさい(笑)」


朝帰りにお休みなさいって変な感じ(笑)


「あ、花びらが舞ってる」


今年は暖かくて桜の開花も早かったから
公園の桜は満開だった


「おはよう、今日はよろしくね」


ベンチの横に立つ桜の木に声をかけマンションへ帰る


「一時間ほど寝ようかな」


目覚ましをかけて仮眠を繰り返し
何度も公園を見下ろすけどそこに誰も現れなくて・・・

もしかしたらベンチを間違えてるのかもしれないと思って
四時ごろから公園に降りて座って待ってたのに

優子が現れる事は無かった