月の女神 16

「お父さん、お母さん(泣)」


私が泣いている間
ずっと抱きしめていてくれた陽菜様


「・・・・・すみませんでした」

「大丈夫?」

「子供の時・・・・」

「ん?」

「私の家は山の中にあったんです」

「・・・・・」

「だから幼稚園には行って無くて・・
でもお父さんに読み書きや英語も教えてもらっていて
運動だって外に出ればアスレチックみたいなものだったから
毎日楽しくて・・・
お母さんがお仕事行った帰りに
お菓子やケーキを買ってきてくれるのが
唯一の贅沢だった・・・」

「・・・・・・」

「今考えるとお父さんは仕事に行かずに
主夫してた」

「食材とかは?」

「野菜は自給自足でお肉やお魚は
お母さんが買ってきてたと思います」

「凄いね」

「お父さんって何してた人だったんでしょう」

「執事だから何でも出来たんだよ(бвб) 」

「しつ・・・じ?」

「優ちゃんのお母さんには
絵本作家になるという夢があった
でも無理やり結婚させられそうになって・・・
きっと執事だったお父さんは苦しむ麻衣さんを見かねて
連れて逃げたんだと思うの」

「でもお爺さんの所には執事は居ませんでしたよ」

「そんな事を起こした執事の家族を
そのまま置いておくと思う?」

「・・・・いえ・・・」


そうだったのか・・・・
だからお手伝いさんしかいなかったんだ


「だったらお母さんは
お父さんを愛していなかったのかもしれない」

「どうしてそう思うの?」

「だってお母さんが愛してたのは
陽菜様のお母様だったんでしょ」

「そうかな・・・始めは愛が無かったかもしれない
でもみんなそうでしょ
始めからお互いが好きだなんてめったにないよ」


確かにそうかも


「愛し合っていたかどうかは優ちゃんが
一番わかってるんじゃないの?」


二人は仲が良かったと思う
そんな二人を見てるのが私は好きだった

そして私の事をすごく愛してくれていた・・・


「それが答えだよきっと」

「ありがとうございます(。-∀-)」


そして私もお母さんのように
お姉様である陽菜様の事を好きになるのかもしれない

だって凄くいい方なんだもの

初めてお会いした日も
私を慰めてくれたし
話しやすい方だなーて思った

陽菜様に出会えたからお父さんとお母さんのことも
わかったし感謝しかないよね

月の女神 15

おやすみと言ってからいろんなことを考えすぎて
なかなか眠れないでいた



「・・・・・眠れないの?」

「起こしちゃいましたか(;´-∀-)」

「ううん、大丈夫考え事があるなら言ってみて」

「陽菜様のお母様と私のお母さん
ここを卒業して一度も会わなかったんですかね?」

「どうなんだろ、陽菜は小さかったから覚えてない」

「ですよね、もし会いに行ってたのなら
私も行ってたのかなーて」

「絵本を持って来たのなら会ってると思うけど
郵送だったら会ってないよね」

「ですよね・・・・」

「そんな事考えてたの?」

「・・・・・・」

「陽菜には言えない事?」

「言えなくないですけど・・・
お母さんは駆け落ちしてお父さんと
一緒になったらしいんです」

「そうなんだ・・・だから絵本作家になれたのか」

「はい、でもどこで知り合ったのかなーて
お爺さんはお母さんの事何も教えてくれないので
高校を卒業してからの事何も知らなくて・・・」

「そっか・・・気になるんだったら調べてあげようか?」

「でも、ここは閉鎖された空間ですし
調べるすべ無いですよ」

「ネットとか電話は無いけど
陽菜達には特権があるの(бвб) 」

「特権?」


「昼食と夕食の時にいる執事」

「あぁ・・・・そう言えば
特別棟の皆さんにいるんですか?」

「ううん、入っていいのは
選ばれた陽菜達五人の執事だけ」


そう言えば五人しかいなかったっけ
前田さんや渡辺さんにもきっといるはずなのに


「本当は禁止されてるんだけど
外の情報はそこからいろいろとね(бвб) 」


良いのかな(;´-∀-)
でも調べられるなら私も知りたいからお願いした



それから一週間後


「失礼します(-∀-`) 」

「いらっしゃい(бвб) 」

「あれ、今日は・・・・」

「内緒の話があるから
麻里ちゃん達がいない方がいいでしょ」


もしかしてあの話?


食事が終わりティタイム

ソファーに移るといつもは出て行く執事が
目の前にやって来た


「陽菜に話した事をもう一度優ちゃんに話してあげて」

「かしこまりました」


何故か姿勢を正して執事さんの目を見る


「よろしいですか?」

「はい」

「大島様のお母様、麻衣様は
素性がわかっておりましたので
すぐ遡ることが出来たのですが
お父様は本名ではございませんでした」

「大島じゃ無かったって言う事ですか?」

「はい、本名は北川謙二」

「うそ・・・・・
どうして大島を名乗っていたんですか(;´-∀-)」

「たぶん捜されて連れ戻されないように
名前を変えてたんだよ(бвб)」

「それだったら戸籍は」

「そこまでは調べられませんでした」


だよね


「だったら私には戸籍が無いって事ですよね」

「おそらく麻衣様にお子様がいると分かったということは
麻衣様の戸籍に入っていたからだと推測できます」

「待って・・・もしかしてお父さんとお母さんは
籍に入ってなかったって言う事?
私達は家族じゃなかったって言う事?」

「優ちゃん落ち着いて」

「嫌だ!そんなの嫌だ(涙)」

「もう帰っていいよ
後は陽菜が話すから」

「かしこまりました」


一礼して出て行く執事さん

私は事実を受け入れることが出来なくて
ただ泣きじゃくっていた



月の女神 14

この学園の創設者の孫

誰も逆らえないのはそういうことか

そして母親同士の関係・・・・

お母さんが卒業した時には
陽菜様のお母さんは結婚していたのか

許嫁がいるとわかってはいたけど
ショックだっただろうな

そして自分にもいた許嫁が嫌で
お父さんと駆け落ちし
絵本作家になって初めての絵本を
愛した人に送った・・・・

ちょっと待って
考えたことなかったけど
お父さんとはどうやって知り合ったんだろう
学園での三年間は男の人と出会うことはないはず

大学へは行ってなかったと思うんだけど・・・

家は旧華族だから執事なんていないよね?
おじいさまの家でお手伝いさんはいたけど
執事はいなかったし・・・

もしかして許嫁いなかったのかな
で、大学か専門学校へ行ってたとか?
そこで知り合って
無理やり結婚させられそうなお母さんを連れ去ったとか?

おじいさまは何も教えてくれないからなー
わかんないや



「どうかした?」

「いえ・・・あのう陽菜様のお母様は・・・・」

「病気でね・・・気づいた時にはもう遅くて
手の施しようが無かったみたい」

「いくつの時に亡くなられたんですか?」

「優ちゃんのお母さんが亡くなって少したってからかな
大きくなって作家ってどんな人だろうって調べた時に
亡くなっていた事を知って
命日が一月しか変わらないって思ったから」

「二人は天国で会ったんですかね」

「きっと会ってるよ
そして一緒に暮らしてると思う」


そうなるとお父さんは邪魔者だ(;´-∀-)


「そしてお母様たちは私達を出合わせてくれた」


そう言って私の方を見る陽菜様

メイクも何もせずすっぴんなのに
どうしてこんなに綺麗なんだろう

その顔がどんどん近づいてくる


アウアウしてる私

あと数センチと言う所で顔が止まり


「目を閉じて」


と囁くから閉じるしかなくて


私の唇に柔らかな感触が・・・

ただ触れ合ってるだけなのに心臓が破裂しそう(;´-∀-)


ゆっくり離れていくから目を開けると


「ふふっ・・可愛い・・・続きはゆっくりね

今日はもう寝よ」


布団の中に入ると何故か抱きしめられてる私


「あのう(;´-∀-)」

「おやすみ(бвб) 」

「おやすみなさい・・・・」


何も言えずそのままの体勢で寝ることに


続き・・・・キスの後の続きって
あのこと(;´-∀-)?

でも今日は何も起こらなくて良かった・・・んだよね?


月の女神 13

「この学園の創設者って誰か知ってる?」

「お名前だけは存じています」

「それね陽菜の曾おじいさま」

「え・・・しかし名前が」

「お母様の方の曾おじい様だから」

「そうだったんですね」

「この学園に入っている子
特に特別校舎の生徒たちの殆どに許嫁がいるの」

「許嫁?」

「お家の為の政略結婚」

「そんな・・・」

「学校とは名ばかりで
遊ばないように三年間ここに監禁するための建物
まあ、一般校舎の人はそうじゃないかもだけど」

「監禁・・・・」

「そう思わない?
外の情報が一切入って来なくて
休みになっても家に帰れない
ここから出れるのは卒業するか
病気になって退学するしかないんだから」


確かにそうだ、おじいさまの事が心配でも
こちらから連絡することはできず
たまに来る手紙も外の事については
一切書かれていない


「お姉様制度はつまらない生活を
楽しくするための制度」

「陽菜様が創られたんですか?」

「ううん、創ったのはお母様」

「・・・・・・」

「お母様は陽菜が物心ついたころからずっと
あの絵本を読んでくれてた」

「・・・・・」

「そして嬉しそうに、この絵本は
お母様が大好きだった妹がくれたのよって
小さかったからまだよくわかってなかったけど
お母様は妹でお兄さんしかいないから妹は居ないはずなの」

「お姉様制度の妹・・・」

「優ちゃんのお母様もここの生徒さんだったんだよね」

「はい、でもだからと言って
妹が私の母だったとは
言い切れないのではないですか?
絵本を買って送って来たのかもしれないし」

「この絵本をね読んではくれたけど
決して触れさせてはくれなかったの
毎回大切そうに持ってきて持って帰るの繰り返し
どこに置いてあるのかも知らなかった」

「それを貰ったんですか?」

「遺品整理をしていて偶然見つけたの」

「遺品・・・まさか」

「そう、陽菜のお母様もこの世にいない
まだお父様とお兄様がいるだけ優ちゃんよりましかな」


全然知らなかった


「見て」


絵本の一番最後のページを開き
私の前に置く陽菜様

そこには


”大好きなお姉様へ”

ご結婚おめでとうございます

ずっと心はお姉様の傍に

あなただけの麻衣より


「涙の痕・・・」

「所々滲んでるのを見て
本当に愛し合ってたんだって思った
陽菜もこんな恋をしたいなって
そして月の綺麗な夜に優ちゃんと出会ったの
陽菜達は出会うべくして出会ったんだよ」


まさか陽菜様と私のお母さんが
お姉様と妹だったなんて・・・


そんな偶然があってもいいの?


月の女神 12

指原さんに今日は戻ってこれないかもしれないと言ったら
頑張ってねと言われた

やっぱりみんな知ってるんだね

お風呂は自分の寮で入っていくので
九時に伺いますと言ってある


初めて会った時みたいに
ずっとお話ししてて朝・・・
な〜んて事にならないかな・・・

もしかしたらそのつもりかもしれない
みんなが居たからああ言ったけど
ルナ様そう言う事嫌いそうだもん

来るから抱くだけって言ってたし・・・
私が望まなかったら大丈夫だよね?


一般寮を出て特別寮・・・とは名ばかり
見た目はマンションそのものの前へ着いた

大体、夜間外出禁止だって言ってる割に
誰も見回りしてないってどう言う事?
誰か私を見つけて連れ戻してよ(;´-∀-)

あたりを見渡しても誰もいないから
仕方なくはルナ様の部屋へのエレベーターに乗った


「ふぅ・・・・・」


ドアの前で大きく息を吐きだし気持ちを落ち着かせ

外に備え付けられてるボタンを押す

その上にはたぶんカメラがあって
誰が来たのかすぐわかるようになっている


「本当にマンションだよこれ」


寮ならこんなもの必要ないからね
一般寮には鍵なんてついてないし
入り放題だけどお嬢様方だから
事件は起きない‥‥と思う


自動で鍵が開きドアも自動で開いた


「失礼します・・・」


前は明るかったのに今日は薄暗い

中へ入るとまた自動でドアが閉まった


「ルナ様どこですか・・・」

「こっち(бвб) 」


いつも食事をするところには誰もいなくて
声をかけると奥の部屋から声が


そこへ近づき中を覗くと大きなベッドがあり
その上にルナ様が座っていた


「そこにパジャマが置いてあるから着てみて」


指さされた方を見ると
どう見てもお揃いのパジャマが置いてある

パジャマを着ると言う事は
寝ながら話をするって事かな・・・

だってそういう事するなら着る必要ないもんね?


「向こうで着替えてきますね」

「別にそこでもいいのに」

「埃が立つといけないので(;´-∀-)」

「わかった、待ってるから早くしてね」


リビングへ出て急いで着替え
自分の服はたたんで置いておく


「お待たせしました」

「あぁーやっぱり優ちゃん似合う(бвб) 」

「ルナ様も可愛いです」

「ふふふありがとう
でもルナ様は嫌かも」

「でも、みんなそう呼んでるし(;´-∀-)」

「優ちゃんには名前で呼んで欲しい
一番最初は呼んでくれてたでしょ」


初めて会って話し込んだ時は何も知らなくて
陽菜先輩って呼んじゃったけど今は(;´-∀-)

「陽菜様でもいいですか?」

「様はいらないけど何かと言われそうだからそれでいいかな」


そう言いながら自分の横をトントンと叩く
ここへ来いって言う事だよね


「失礼します(;´-∀-)」


ゆっくりベッドへ上がり隣に座る


「優ちゃんのお母さんてどんな人だったの?」

「うっすらしか覚えてませんが
凄く優しくていつもお月様の話をしてくれてたと思います」

「あの絵本のお話し?」

「はい、陽菜様が持ってらっしゃるのは
一番初めに書いた絵本です」

「そっか・・・陽菜もお会いしたかったなー」


ほら、やっぱりお話しだけじゃん
みんな脅すからドキドキして損しちゃった

そこからは気持ちが軽くなり
初めて会った日のように話が弾み
先輩が総代だと言う事を忘れちゃってたんだ

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