「この学園の創設者って誰か知ってる?」

「お名前だけは存じています」

「それね陽菜の曾おじいさま」

「え・・・しかし名前が」

「お母様の方の曾おじい様だから」

「そうだったんですね」

「この学園に入っている子
特に特別校舎の生徒たちの殆どに許嫁がいるの」

「許嫁?」

「お家の為の政略結婚」

「そんな・・・」

「学校とは名ばかりで
遊ばないように三年間ここに監禁するための建物
まあ、一般校舎の人はそうじゃないかもだけど」

「監禁・・・・」

「そう思わない?
外の情報が一切入って来なくて
休みになっても家に帰れない
ここから出れるのは卒業するか
病気になって退学するしかないんだから」


確かにそうだ、おじいさまの事が心配でも
こちらから連絡することはできず
たまに来る手紙も外の事については
一切書かれていない


「お姉様制度はつまらない生活を
楽しくするための制度」

「陽菜様が創られたんですか?」

「ううん、創ったのはお母様」

「・・・・・・」

「お母様は陽菜が物心ついたころからずっと
あの絵本を読んでくれてた」

「・・・・・」

「そして嬉しそうに、この絵本は
お母様が大好きだった妹がくれたのよって
小さかったからまだよくわかってなかったけど
お母様は妹でお兄さんしかいないから妹は居ないはずなの」

「お姉様制度の妹・・・」

「優ちゃんのお母様もここの生徒さんだったんだよね」

「はい、でもだからと言って
妹が私の母だったとは
言い切れないのではないですか?
絵本を買って送って来たのかもしれないし」

「この絵本をね読んではくれたけど
決して触れさせてはくれなかったの
毎回大切そうに持ってきて持って帰るの繰り返し
どこに置いてあるのかも知らなかった」

「それを貰ったんですか?」

「遺品整理をしていて偶然見つけたの」

「遺品・・・まさか」

「そう、陽菜のお母様もこの世にいない
まだお父様とお兄様がいるだけ優ちゃんよりましかな」


全然知らなかった


「見て」


絵本の一番最後のページを開き
私の前に置く陽菜様

そこには


”大好きなお姉様へ”

ご結婚おめでとうございます

ずっと心はお姉様の傍に

あなただけの麻衣より


「涙の痕・・・」

「所々滲んでるのを見て
本当に愛し合ってたんだって思った
陽菜もこんな恋をしたいなって
そして月の綺麗な夜に優ちゃんと出会ったの
陽菜達は出会うべくして出会ったんだよ」


まさか陽菜様と私のお母さんが
お姉様と妹だったなんて・・・


そんな偶然があってもいいの?