「昨日のリハ通りにすれば成功間違いなし!」

「頑張ろう」

「ゆっぴーとたかみなは自分は王子様を10回言う」


自分は王子様をみんなの前で10回言わされ


「自分はイケメンを10回(*`ω´)」


自分はイケメンを10回言わされ

なんか恥ずかしさが無くなってきたぞ
こうなったらやけくそだ何でも来い!


「篠田最高(*`ω´)」

「篠田最高、篠田最高、しのだ・・・・え?」


「いやー照れるな(*`ω´)」

「ふざけてないで円陣組むよ」

「ほーい(*`ω´)」


なんか緊張がどこかへ行っちゃった(笑)


「たかみな」

「優ちゃん」


しっかり握手して見つめ合って頷き


「頑張ろうね」

「うん」


舞台の中心へ向かって歩き出す









「いやー始めはどうなるかとヒヤヒヤしたよ」

「それ私も思った、お客さんの反応冷たかったもんね」

「あの状態があと5分・・・いや3分続いてたら
篠田独演会しようと思ったもんね」

「麻里子の話なんて誰も聞かないし(бвб)」

「余計に凍りつかせるよね(∵)」

「シクシク(*`ω´)」



誰もが双子の王子役は篠田さんと秋元さんか佐江だと思っていた
なのに出てきたのが見たこともない人物

黒子を覚えてる人なんて皆無だろうしね

それに王子が小さな二人だったから会場はざわついた

でもそれは想定内だったから
私とたかみなは練習通り
自分の今出来る事を精一杯頑張った
そしたらカッコ可愛いじゃんて言う声がどこからか聞こえてきて・・・
そこから少しづつ雰囲気が変わっていったんだ

酒場のシーンではいつもの人気メンの先輩たちが出て来ると
笑いや好感の持てる声が聞こえてきたし

劇中は王子が町娘にグイグイ引っ張られて行くのが受け
こちらの思惑通り笑いが起きる

王子たちは自分の身分を隠し酒場に通っていたから
客たちとも友達になってた

しかしある日近隣の王女との婚姻の話がきて
どちらかの王子が結婚しなければいけなくなった
それも婿養子として・・・

町娘の姉妹のことを好きになっている事を知っていた二人

お互い自分が好きなのはバレてないと思っていて
自分が我慢して王女と結婚すれば兄弟は幸せになれる

お互いが思い合った結果
二人共町娘のことを諦めようとしていた

なんでも話し隠し事をしない姉妹は
よそよそしくなっていく二人を不審に思い
情報を集め出す
そして二人共自分たちの元を離れていくと知って
強硬手段に出る

好きと言えなかったけど王に名乗り出る前に
最後にもう一度会いたい

最後の思い出を作りに来た二人を
町娘達はそれぞれ逆の角に呼び出し
何も言わずにいきなりキスをする

初めてのキスに放心状態の可愛い王子

娘からキスされたのに
キスの責任を取ってと迫られ二人は頷かされるはめに・・・



「でもさ、あの時いつまでキスするんだよって突っ込みたくなるくらい
長かったじゃん」

「それも示し合わせて誰かが合図してたんじゃないかってくらい
同時に終わったからどっち見ていいか迷ったもん」

「その後の王子二人なんて尻もちついてたし
それも同時に(笑)」

「さすが双子って声が出て笑いがおこったからね」

「でもさ、始めは王道な話だったはずなのに
何故か喜劇みたいになってたよね」

「そこがまた良かったんだよ」

「それにあの子達がまさかあんなに人気が出るだなんて誰が思った?」

「そうそう、資金集めの写真会で
篠田さんや小嶋さんに引けを取らない・・・
いやもしかしたら多いんじゃないかってくらい並んでたよね」

「可愛い〜とか守ってあげたいーて言われて
抱きつかれたりしてたら
急にハグ1回200円が追加されたからびっくりした」

「ねえねえ、小嶋さんの機嫌どんどん悪くなっていってたの知ってた?」

「うん、気づいてた
だってどんどん列が減っていってたもん
怖いから今日は一回でいいですっていって優子に並びに行ってたから
益々機嫌悪くなってた(笑)」


先輩たちの話をドキドキしながら聞いてるんだけど
褒められてるのか面白がられてるのかわからない


「で、ゆっぴーとたかみな、感想は」

「演じてるというか・・・先輩方に引っ張られて最後まで
やりきることが出来ました
こんな未熟な私をご指導いただき本当にありがとうございました」

「そう言う感想じゃなくて」

「へぇっ?」

「キスだよ、あの長ーいキス(*`ω´) 」

「あ、あれは・・・なんていうか・・・
頭がボーとしてきて何も考えられなくなって・・・
セリフ飛んじゃってすみませんでした(汗)」


あの時私達のセリフがあったんだよね
でも腰抜かしちゃって腑抜けになるってあんな感じなのかな

で、小嶋さんと前田さんが機転をきかせ
それぞれ交互にアドリブを入れてまた笑いを取って・・・
篠田さんが中から出てきてまた笑いを取るという・・・

多分私には一生無理だろうな・・・・・

だから

「皆さんのおかげで最高の思い出が出来ました
本当にありがとうございました」

頭を深々と下げお礼を言った


あれだけ練習したのにセリフ飛ばしちゃうし
下に座っちゃうし・・・・
やっぱり私には向いてない


だから、今日を最後にしよう
これだけで、この素晴らしい思い出だけで
これからの大学生活を有意義に送れるから・・・

そう思ったらまた涙があふれてきて・・・
バレないように
顔をあげず俯いたまま
出て行こうとしたら腕を掴まれ


「何辞めようとしてるの、あなたも陽菜を捨てる気」

「違います・・・捨てるとかじゃなくて・・・
小嶋さんに私はふさわしくないです
小嶋さんには佐江みたいな王子が似合います(涙)」

「はぁ?どうして陽菜の相手をあなたに決められなくちゃいけないの」


「だって、身長だって容姿だってお似合いだからぁー(泣)」


小嶋さんがあなたって呼ぶ時はめちゃくちゃ怒ってる時
でも、どうする事も出来ないんだもん
こんな私じゃー小嶋さんを幸せに出来ないんだもん


「宮澤」

「はい(汗)」

「陽菜にキスして」

「え!?」

「主役やりたいならそれくらい出来なくちゃいけないでしょ」

「・・・・わかりました、それでは失礼します」


ゴクリと喉を鳴らし近づく佐江


ほら似合うじゃん、佐江の方が、佐江の方が・・・・




『ダメ!!』




佐江に抱き付き動きを止めると

私の声にかぶせて来たもう一人の人が
小嶋さんを後ろから羽交い絞めにしていた


「・・・・・・・ゆきりん?」


「は、陽菜ちゃんごめん、でも、でも
今、佐江ちゃんとするのはなんか違う気がするから・・・・(汗)」

「優子も離して(笑)」

「ご、ごめん」


私どうしちゃったんだろう
小嶋さんは私のモノじゃないんだから
誰とキスしようが誰とセ・・・・・

やだ、やだ、もうほかの人としてる所は見たくない
たとえキスであっても・・・・


「陽菜ちゃんは私としかしちゃダメなの(泣)」


みんなの前でワンワン泣いてしまった