死の間際

佐江ちゃんから優子を返すねと言われた時
涙で声が出なくて頷くことしか出来なかった

優ちゃんは喪主を立派に務め
お葬式が終わるまで一切涙を見せなかったのに

久しぶりに二人でベッドに入った時

無言で陽菜に抱きついてきて声を殺して泣くから


思いっきり泣いていいんだよって言うと
息ができなくなるくらい泣く様子に
陽菜まで釣られて泣いてしまい

朝起きた時陽菜たちの顔を見て才加が一瞬驚いた顔をしたから
相当目が腫れてたんだと思う


佐江ちゃんがいなくなってからの優ちゃんは
赤ちゃん返りじゃないけどすごく甘えてくるようになった
いつも陽菜に引っ付いていて
何も言わず傍から離れると
慌てて探し回る姿を見て苦笑いする才加

でもそんな優ちゃんが愛おしいから何も言わず
されるがままで居た

優ちゃんにひ孫が生まれたのはそれから4か月後の春
元気な男の子でそれはそれは可愛かった

陽菜のひ孫が生まれたのは三か月後の夏
可愛い女の子だった


「やっと・・・やっとだねにゃんにゃん(。-∀-)」

「そうだね、これで結婚してくれたら
陽菜と優ちゃんは本当に親戚(бвб) 」

「絶対にさせる!
いいかこの二人は今日から許嫁だからな」

「強制はダメだよ(笑)」

「いいの!私の権限により許嫁に決定!!」


この二人が大きくなって結婚する頃には
多分私達は居ない

だからかな、子供達はだれも文句を言わずに笑ってる

それでも、待ち望んでいた男の子と女の子に
期待をせずにはいられなかった



「ねえにゃんにゃんこいつ先に生まれてしかも男なのに小さくない?」


二歳になったひ孫二人は私達によくなついていたから
自分達が遊びに行きたい時はすぐ預けに来る孫達
まあ、可愛いから良いんだけどね


「血筋かな(笑)うちは才加も陽菜も大きい方だから
みんな大きいもん、ねえ才加」

「う、うん・・・・」

「どうしたの?」

「なんか調子悪いんだよな」

「もう80歳になるのに鍛えすぎなんじゃないの(笑)」

「そうかもな、少し控えたほうがいいのかな・・・」


退職してからトレーニングに目覚めた才加は
毎日ジムに通いだし、陽菜達もそれに巻き込まれていた

そのおかげでこんなに元気なんだけどね(笑)

もちろん陽菜と優ちゃんは毎日は行かないけど
週に三日は通ってヨガや有酸素運動をしてた

でもひ孫が生まれてから
共働きの息子夫婦や孫たちに替わり
保育園の送り迎えや病気になった時の
面倒を見ないといけなくなり
行けない週もあったりして
会費が勿体ないからやめようかって話をしてる所だったから


「家にもトレーニング器具あるんだし
そろそろいいんじゃない
朝とかにランニングすればいいし
浮いたお金はこの子達に使ってあげようよ(бвб) 」

「そうだな・・・体はどこででも鍛えれるしな」

「そうだよ、その方がもっと沢山一緒にいれるよ」

「そ、そうだな(汗)」

「何でてれるぅ(笑)」

「そうだそうだ!勘違いすんなよ〜(´-∀-)」

「してねえわ(汗)」

「アハハハハ爺さんが一番うぶだよな」

「優ちゃんの方がオッサンだもんね(бвб) 」

「そんな優子さんが好きなくせに(-∀-`) 」

「好きだよ(бвб) 」

「・・・・・(-∀-`) 」

「優子も照れてるじゃないか(笑)」

「いくつになってもこの女は・・・くぅ・・・」


本当のことを言ってるだけなのに変な優ちゃん(бвб) 


「お茶入れたけど飲む?」

「ありが・・と・う」


はいって渡すと

「あっ・・」


持ちそこなったのか床へ全部こぼれてしまった

「ごめん(汗)」

「ううん陽菜こそちゃんと持ってないのに離してごめんね
かからなかった?」

「う、うん・・・」


タオルを持っていき床を拭いていたら


「ごめん今日は・・・もう・・寝る」

「大丈夫?病院行く」

「寝れば・・・大丈・夫だろ」


そう言ってリビングから出て行った才加


「大丈夫かな、才加があんな事するの珍しいし心配(;´-∀-)」

「寝る前に様子見に行ってみる」

「その方がいいかも」


陽菜より仲がいいんじゃないかってくらい才加とは気が合うのに
決して陽菜と才加の寝室へは入らない優ちゃん

陽菜だって同じで佐江ちゃんとの寝室へは入らなかった
佐江ちゃんが最後息を引き取る日までは・・

それは暗黙の了解というか・・・
そこでの二人を想像したくないからかな


ガタン・・・


「今物音しなかった?」

「上からしたよね才加の部屋かな」

「様子見てくる(汗)」


階段から落ちないように急いで上がりドアを開けると
頭を押さえ苦しそうにもがいてる才加


「才加(汗)」

「頭が・・・」

「優ちゃん・・・優ちゃん来て(汗)」

「どうしたの・・て才加大丈夫(汗)」

「頭が痛いって言うのどうしよう(汗)」

「救急車・・・私が救急車を呼ぶから
陽菜は杏奈と李奈に電話してあの子達を迎えに来て貰って」

「わかった」


救急車がなかなか来なくて
その間も苦しそうに唸り顔がドンドン青白くなっていくのを見ていて


「才加死なないでよ」

「はる・・な・・・くっ・・・
いままで・・ありがとう」

「やめてよまだ死なないからぁ(涙)」

「うぅぅ・・・痛い・・・あぁっ・・」


救急車よりも孫たちの方が早く着き


「私達が病院へ連れて行こうか?」

「その間に死んじゃったらダメだから救急車をまとう
救急車の中の方が安心だし」

「そうだよね」


息子達と同時に救急車も来て
久しぶりに家が人であふれかえっていた

救急車には陽菜と優ちゃんが乗り込み
みんなは病院が決まり次第付いてくる準備は出来ているのに


「おそらく脳梗塞ですね」

「何とかしてください」


中々受け入れの病院が決まらなくて
どんどん弱って行く才加


「才加、ヤダ頑張ってよ」

「まだやりたい事あるんだろ死ぬなよ(。-∀-)」

「優子・・・陽菜をたのむ」

「ヤダヤダ、三人で暮らしていくの!」

「陽菜・・幸せだったよ・・・ありがと・・・」

「さやかぁ(泣)」


『K病院へ行きます』


酸素マスクをつけられ心臓マッサージをしながら
病院へ


でも才加が目を開ける事は二度と無かった