「にゃろ、お願い」

「生徒に手を出すなんてあり得ない」

「まだ手は出してない(*`ω´) 」

「ドヤ顔で言う事?」

「お互いが一目ぼれだったんだから仕方ないでしょ」

「陽菜、お姉ちゃんの為にひと肌脱いであげて」



陽菜の6つ上のお姉ちゃんの麻里子

陽菜の高校の養護教員なんだけど
事もあろうか陽菜と同級生の男の子と恋に落ちてしまった

もちろん卒業するまでは清い関係でいるという条件で
親達を説得したみたい

でも会ったり遊んでると絶対にどこかでばれちゃうでしょ

陽菜と付き合ってる事にすれば
家に来てもおかしくないし
一緒に遊びに行ってもおかしくないから
卒業するまで恋人のフリをして欲しいと
みんなから言われ
付き合ってる人もいなかったからOKした


まさか駅であんな衝撃的な告白を受けるとは
夢にも思わなかったから

恋人のフリだけで好きでも何でもなかったから
淳の事は隠して優子と付き合った

言う必要はないと思っていたし
どこからどう漏れるともわからないから
極力少人数だけの秘密にしたかったから

でもそれが振られた原因だったとは・・・


本当に好きだったんだよ
ポニーテールを揺らしながら歩く姿とか
少ししゃがれた声とか
笑うと両頬に出来る笑窪とか

こんなに人を好きになった事無いって言うくらい好きだったんだから

クリスマスのサプライズ旅行も
優子の誕生日が一週間前だったと聞いた時から
計画してバイトしてお金をためた

なかなか言い出せなくて


「予定入ってたらどうするの」

「その時は麻里ちゃんが買い取ってね」

「それいいねぇ〜、前日まで言わないでいれば(*`ω´)」

「いくらなんでもそれは無理」


「にゃろ・・・真剣なんだね」

「うん、すごく好き(бвб)」

「人間に興味ないって思ってたからお姉ちゃんは嬉しいよ」

「ひどーい、少し位興味あるもん」

「あははは、うん、よかったよかった」

自分の事のように喜んでくれた麻里ちゃん


大阪でも麻里ちゃんに美味しいお店とか調べてもらい
その都度連絡して貰ってた

そして初めての夜・・・


私達は上手くいっていた

ううん、そう思っていたのは陽菜だけだったみたい

麻里ちゃんと淳と三人で行った初詣

本当は優子と行きたかったけど
来年からはいけるんだし
クリスマス、陽菜が旅行に行ってたから二人は会えなかったんだよって
言われて泣くなく断った


入試の勉強も一緒にしたかったのに
淳が麻里ちゃんに勉強を教えてもらいたいとか言うから
陽菜も行くしかないじゃん・・・・

それでも後二ヶ月我慢すればって思ってたのに・・・


あの日、突然(さようなら)と別れを告げるLINEが来て
返事をしようと思ったらブロックされていて
電話もメールも通じなくなった

電車で捕まえようとしたけど
その日から一度も姿を見る事は無かった

それでも卒業するまで我慢して
卒業式の次の日優子の家へ行くと玄関でばったり
いつも一緒に居る・・・

確か優子がみーちゃんって呼んでたっけ?
その子にいきなり

「もう優子にかかわらないでください
私が優子を守りますから」

そう言われた時、この恋は終わったんだと思った


それからいろんな人と付き合ったけど
好きになれなくて・・・

がらにもなく仕事を頑張っているうちに出世しちゃって
人の上に立つ役職についてしまった

それでも好きな仕事だったから楽しくやっていたのに

「今日中途採用の子が入って来るから小嶋の部署で見てやって」

「えーうちですか」

「確か同い年だったと思うから
仲良くやってあげて」

「仲良くって・・・仕事できなかったら引き取って下さいよ」

「はいはい」


初めて見た時ショートカットでスクエア眼鏡をかけていて
とても同い年に見えなかったけど
何処かで見たことがあるなーて挨拶も聞かずに考える

「ねえ、どこかであったことある?」

「いえ・・・・」

「そう・・・」

必死に思い出していると
誰かが犬の話を始めたからピンときた

「あぁぁ!!」

いきなりの大きな声にみんな驚いて

「どうしたんですか(汗)」

「あなた、毎朝雑種犬を連れて土手を走ってない?」

「してましたけど」

「やっぱり、だから見た事あったんだ
ふースッキリした、さーて仕事しよ(бвб)」

「小嶋課長は相変わらず自由人ですよね(笑)」

「そうでなきゃこの仕事はやっていけないよ
みんな見習うように(笑)」


ここ数週間、通勤電車から外を見ていた時
楽しそうに犬と走っていた子に似てるんだって思って
つい大きな声を出してしまったけど
同一人物だとわかりスッキリしてその時は仕事に戻った


でもねうすうす気づいてたんだ
容姿は変わってしまったけど
変わらないしゃがれた声
たまに北原に見せる笑った時に出来る笑窪

そしてあの日編集長にお願いして見せてもらった履歴書

名前も生年月日も同じ偶然なんてあり得ないよね

逢いたくても逢えなかった優子
だから我慢できなくて
気づいていないふりをして抱いた


陽菜は最低な人間だ