乾燥した唇・・・・・
ゆっくり離れ頬を流れる優子の涙を拭う
「あったかい・・・・」
その涙は確かに温かかった
なのに
「陽菜・・・・・ありが・・・とう・・・(すき)・・・・」
最後の言葉は声になっていなくて
唇がそう動いたように見えただけなのかもしれない
ピピピピピィ!
機械音が鳴り出す
「先生を呼んで」
心臓マッサージを始める看護師さん
「優子・・・ゆうこ!」
こんなに叫ぶことはもう一生ないだろう
それほど叫んだのに・・・・
優子は二度と目を覚まさなかった
お葬式とは名ばかりの簡単な式で
お見送りも施設の関係者と陽菜と麻里子だけ
綺麗な顔で寝ている優子
「ニャロそろそろ離れないと」
手を伸ばし頬に触ると冷たくて・・・・
涙が自然とこぼれる
「バカ優子・・・ずっと愛してるから
天国で泣かないで」
その後、麻里子に抱き付き陽菜が泣いた
篠田役得(*`ω´)
なーんてふざけて誤魔化してたけど
抱きしめてくれていた手が少し震えていたの知ってるよ
全てが終わり骨だけが残る
もちろんお墓なんてないからお寺に持って行くらしい
「・・・・・」
園長の娘さんが陽菜の前に立ち
「ん!」
ぬいぐるみを陽菜に押し付けて来た
「これ何」
「私が持ってようと思ったけど
あんたが持ってたほうが優子が喜ぶと思うから
だから・・・・大切にしてよね」
それだけ言うと走って行ってしまった
「あの子」
「はい」
「優子の事が好きだったのよ」
「・・・・・・」
「でも優子は妹としてしか思って無くてね
結局伝えないままあの子の初恋は終わり」
「・・・・・・じゃーこのぬいぐるみは娘さんが持っていた方が」
「優子ね、そのぬいぐるみをあなたに見立てて練習してたのよ」
「練習?」
「どうやって声をかけようか、何度も何度も繰り返し練習してた
そしてそれを抱いて寝てたみたい
だから、それをあなたが持っているほうが優子は嬉しいんじゃないかしら」
「私が・・・・」
「よかったら今度は施設に遊びに来てください
子供達も綺麗なお姉さんが来てくれたって喜んでましたから」
「二人で行きます(*`ω´) 」
「待ってますね(笑)」
「よし、今日は篠田の奢り
みーちゃんも呼んでぱーとしよう」
「今日はいい」
「そっか・・・一人で大丈夫?
篠田泊まろうか?」
「変な事が起こったら嫌だからいい」
「こんな日にするわけないでしょ」
「他の日ならするんだ(笑)」
「どうでしょ(*`ω´) 」
麻里ちゃんの明るさに少し救われた気がする
「麻里子、ありがとね」
「そんな改まって言われると照れる(汗)」
「ふふ、じゃーまた会社で」
「元気出して」
「ありがとう」
空を見上げると雲一つない快晴で
優子が”姫、元気出して”
と言ってる気がした
いきなり告白してきて
いつのまにか家に入り込んでいて
いつのまにか陽菜の心に住み着いていた
そしていつのまにか・・・・
ううん突然いなくなってしまった優子
犬のぬいぐるみ一つだけ残して・・・・
たっれ下がった耳に人懐っこい顔
これどう見ても陽菜じゃなくて優子じゃん(笑)
「バカヤロー!」
空に向かって叫ぶと少しスッキリ
「さあ、帰ろっか優ちゃん(бвб) 」
分身をしっかり胸に抱き足を一歩踏み出した
おしまい