いつまでもいつでも

mariko



中休憩があったので、いったんロビーに出てスタッフらしき人に声をかけることにした

いつも先頭きって行動したり話しかけたりする優子は俯いたまま
話し出そうとしないから篠田の出番かな！

「すいません」

「はい？」

「私達、AKBの篠田と小嶋と大島と言います」

「ああっ！」と言う顔をされたから

「岩崎さんにお会いして挨拶出来たらな、
と思いまして声を掛けさせていただきました」

「無理ならまた日を改めますので・・・」

「聞いてまいりますので少々お待ちください」

５分後

「終了後、握手会がありますのでそれが終わってからでもよいのでしたら
この近くに魚政と言う割烹料理屋さんがあるのでそちらでお待ちしてくだされば
お会いしたいとのことなんですが」

「ありがとうございます、待ってますとお伝えください」

三人で頭を下げ、席に戻った


後半の部は圧巻だった

私達のようにダンスがあるわけでもなく、走り回るわけでもないのに

この充実感、癒され間は半端ない！

「凄かったね！！」(бвб)　

「うん」(´-∀-)

「また来たいね」(*｀ω´)　

「うん」(´-∀-)


うん、しか言わない優子

「今度はメンバーも誘おうよ！」(бвб)　

「あんまり多いと迷惑になるかもよ」(*｀ω´)　

「んん〜ん」考え込む陽菜

「じゃーまた三人で来ようね！」(бвб)　

首をかしげながら話すしぐさはいつ見ても可愛い




「優ちゃんあんまりしゃべんないね」


お店に着くと奥の部屋に案内された

先に注文するのも失礼かと思い待っていると料理が運ばれてきて

先に食べて頂いておくようにと仰せつかっておりますのでどうぞ召し上がってください

さすがベテランの方は心遣いが違うなーと思いながら先に頂く事にした


料理が美味しいとか、今日のコンサートの事とか陽菜と二人で話しているんだけど

入り口を背にして座る優子の箸も口もすすまず黙って下を向いていた


少しすると外で声がした

「いつもお世話になっております」

さっきまで聞いていた声が聞こえた途端、優子の体がビクンと小さく跳ねた



障子があくとステージで見るよりも、小柄でかわいらしい人が立っていて
私たちを見て頭を下げたので

私達も慌てて立ち上がり頭を下げた

優子だけは座ったまんまだったけどね・・・

「急に逢いたいとわがまま言って申し訳ありませんでした」(*｀ω´)　

「いいえ、こんな若い方達に逢いたいって言ってもらえるなんて・・・
いつでも大歓迎ですよ」

ニコッと笑いかけてくれた


あれ？この笑顔どこかで見たことあるかも・・・・？

何処だったかな〜？・・・・考えていると


挨拶し終わってからずーと俯いたままの優子の背中を見ていた
岩崎さんの目から大粒の涙が零れ落ちた・・・

haruna



お疲れ様でした！

おつかれ〜

収録が終わった

「今日は早いから、みんなでご飯行きましょうよ！」

たかみながメンバーに声をかけている

私達は用事があるからって断ると

「あれ？三人でどっかい行くんすか？」

「あっ、えーと映画見に行く約束してるんだよね、優ちゃん」

「うっ、うん（汗）」

「高橋も行きたいっす！」

え〜どうしよう・・・言葉に詰まっていると

「ダメダメ、今日はアダルトリオの日なの！」(*｀ω´)　

「そんな〜（涙）」

トボトボと肩を落として離れていくみなみ・・・

ごめんね！と心の中で謝った



夕食を軽めに食べて会場に入る

一応AKBだとばれない様に、帽子と眼鏡をかけてるんだけど

年配の方が多いからきっと私達の事知らないよね、なんて言ってたのは間違いで

学生、若い人たち、親子で来ていたり、幅広い年齢層の人が見に来ていた


その中でも一番驚いたのは

「せーの！宏美ちゃーん！」

「L・O・V・E　ラブリー宏美！」

と、MIXを入れる親衛隊がいたこと！

しろいTシャツに黄色い鉢巻、ピンクのサイリュウム

決して大勢だとは言えないけど

礼儀正しくて始めと終わりに挨拶とお礼を言っていた

「ねえ、優ちゃん、この人・・・宏美さんて何歳？」(бвб)　

「・・・・・」

「確か５４歳だったと思うよ」(*｀ω´)　

「応援の人達凄いね、アイドルみたいだね」

麻里ちゃんが頷く

優ちゃんは黙って前だけを向いて聴き入っていた


２階席の右端からかぶりつくように見入っている姿や横顔が愛しくて
抱きしめたくなるのを必死で抑えていた

yuko



朝、目が覚めると二人に抱きしめられて眠っていたようでちょっと恥ずかしくなる

ベットから出ようと動いたら麻里ちゃんが目を覚まして

「おはよう！」　チュッ　頬にキスされて顔が赤くなっていくのが自分でわかる

もじもじしていると「かわいい〜」て、抱き寄せられた


すると、絡めていた腕がほどけた陽菜も気が付いて目を開ける

抱き寄せられている私を見て

「だめー陽菜の！」(бвб)　

「篠田のだよ！」(*｀ω´)　

「違うもん！」(бвб)　

大島さんは爆死寸前です（汗）(´-∀-)

二人のほっぺに　　ちゅっ！チュッ！

二人は顔を真っ赤にしてフリーズ

その隙にベットから逃れ

「朝食の用意するね」(´-∀-)

「あっ、篠田も！」

陽菜はまたベットに潜り込んだ


今日は昼からの全体収録だから久しぶりにうっくり過ごしている

麻里ちゃんも陽菜も一人の仕事が多くなってるし

心友の佐江は上海だし、才加も舞台にと、みんな忙しい


みんなの頑張りは大島さんうれしいんだけど・・・少し寂しい・・・



そうそう、昨日の話の流れで宏美さんのコンサートを調べてみると

丁度東京であるみたいで、その日の予定は、これもたまたま
三人とも夕方上がりだったから

仕事へ行く途中にコンビニによってチケットを購入した。

mariko



わんわん泣いていた優子が落ち着くと

私はキッチンに立って紅茶を入れた

リビングに戻るとまだ胸に顔をうずめている優子の頭を
やさしく撫でている陽菜

ちょっと妬けちゃうなー・・・

「こうやってるとお母さんを思い出すんだー」

優子がポツリと呟く

「いつも歌を歌ってくれていて・・・・あっ！」

何か思い出したように立ち上がって

「さっきもにゃんにゃんに抱き付いてる時に、聞こえてきた歌声に
懐かしさを感じちゃって・・・」

ベテラン歌手の人は紅白か他の歌番組で共演したことのある人しか知らない

岩崎宏美と言う人の歌を聴いたのは今日が初めてかもしれない

「陽菜は知ってたもん！」

なんて言ってるけど一度しか聞いたことがないのに
知ってるも何も・・・


「そうだ！まだレンタルショップ開いてるからCD借りに行こう！」(*｀ω´)　

「何か手がかりになるかもしれないね」(бвб)　

三人で出かけてショップに着くと、あんまり数は無かったけど
ベスト盤と最新の２曲を借りてマンションに戻った


曲を聴いていると

「わーアイドルなのに歌がうまいね」(бвб)　

「そうだね、音域の広い歌が多いのに声がよく通って澄んだ声だね」(*｀ω´)　

優子は目をつむり黙って聴き入っていた


「あっこれさっきの曲だね！（いのちの理由）て言うんだね」(бвб)　

曲を聴いていると歌詞の通り

生まれてきてよかった・産んでくれてありがとう！て言う気持ちになる

次の曲は最新曲の（あなたへ〜いつまでも、いつでも〜）


誰一人声を出さずに最後まで聴き入っていた・・・


鼻をすする音が部屋に響いてる・・・

三人とも知らないうちに・・・・泣いていた・・・


「この曲、歌声、気持ちのこもり方半端ないんだけど」(*｀ω´)　

「これメッセージだよ！でもファンの人達だけにじゃないような気がする」(бвб)　

「うん、篠田もそう思う！」


すると優子が

「私、この人に会ってみたい！話をしてみたい！」と言い出した


「共演は難しいけど、コンサートに行けば、楽屋に入れてもらえるかもしれないね」(бвб)　

「こんな時こそ、AKBの名前使っちゃえ！(笑)」(*｀ω´)　

そういうと優子がやっと笑ってくれた

今日はもう遅いから寝ようという事になって

優子を真ん中に私のベットで川の字になり眠りについた

yuko



テレビにかじりついて、姿を、いや歌声を聴いていると心が熱くなってきて
知らない間に涙が溢れてきた・・・

やばい、みんなに変に思われちゃう、ばれないように涙を拭っていると

「優ちゃんどうしたの？」こじぱに聞かれ

あわてて笑顔を作り、そして・・・嘘を吐いた

ウソって心が痛むから嫌だな・・・

それを紛らわすために、また飲み始めそのまま寝てしまった

ふと目を覚ますと、麻里ちゃんのベットに寝ていた

はこんでくれたんだ・・・喉がかわいちゃったなー、ドアに近づくと声がしたから
みんなまだいるのかと思って耳を澄ますと大好きな二人の声

少しの間、聞いていて私は決心した、二人には話そうと・・・



「実は、私のお母さん二人いてるんだ」

「「えっ！？」」同時に驚く二人

「私が３歳の時にお父さんたちは離婚して・・・すぐに新しいお母さんが来て・・・」

「三歳だったけど声だけはなんとなく覚えてて・・・」


夜遅くまで二人に今までの事、なぜ子役になったのか・・・そしてまだ探していることも


でもこの頃は死んじゃってるんじゃないかと諦めかけていた事を・・・

二人は黙って最後まで聞いてくれた

話し終わると


「何でもっと早く言ってくれなかったの！」

麻里ちゃんが怒る

「だってそんな動機でAKBに入ったなんて、夢に向かって頑張っている
みんなには言えなくて・・・（泣）でもね、今は本当に女優になりたいって
思ってるし、AKBにいるのが楽しくて、みんな大好きで・・・ううぅ」

涙が溢れてくるのを止められずにいると

声を遮るかのように陽菜が抱きしめてくれた

麻里ちゃんも後ろから抱きしめてくれて・・・二人に抱きしめられた大島さんは
このまま死んじゃってもいいと思えるくらい幸せだよ

二人とも大好きだよ！ずっとこのままの関係でいたいなー

何があっても、たとえ誰が卒業してしまっても・・・