優子



私の家はいわゆる旧華族
そこの長女として生まれた私は英才教育を受けて来た

跡取りにはお兄ちゃんがいるんだけど
家柄に恥じないようにってね

だから小学生の時いつも独りぼっちだった
だって周りの子達が幼く見えたし
習い事が多かった私は遊ぶ暇もないから友達も出来ない

でも全然寂しくなかったんだそれが当たり前だと思っていたから

なのに急に私の前に現れたド天然の明るい女の子
同じクラスになって前の席だった私にいきなり


「ねえねえ、アイドル好き?」

「・・・・・」

「埼玉県から来ました小嶋陽菜です(бвб) 」

「みんな埼玉県だけど」

「そうだった(笑)」

「えーと名前なんて言うの」

「大島優子」

「優ちゃんだね、陽菜の名前はなんていうでしょう」

「陽菜」

「えぇーすごーい何で分かったの?(бвб) 」


なるべく関わり合わないでおこうと思ったのに
休み時間の度にアイドルの話をしてくるし
毎朝埼玉県から来ましたを聞かされる始末

そんな彼女のペースに巻き込まれ
私の人生が狂いかけた

家のパソコンでそのアイドルを見て
何とか話について行こうと必死だった



多分私は陽菜の事を・・・
いや、たった一人の友達としてだったのか
今となってはどちらでもいいのだが・・・




履歴は毎日消して完璧なはずだった
でも塾の成績が2、3点下がり
私の様子がおかしいと気づいた親に見つかり
パソコンを没収され泣いた

それでも学校での陽菜との会話は私の唯一の楽しみだったのに


「陽菜ちゃんどうして大島さんみたいな子といつも一緒に居るの?」

「だってみんなアイドルの話したらどっかいっちゃうじゃん」


トイレへ行って教室へ入ろうとしたら聞こえて来た会話

なーんだただアイドルの話がしたかっただけなんだ
聞いてくれるなら私じゃなくてもいいんだ

悲しくなってまたトイレへ駆け込んだ

チャイムが鳴っても戻ってこない私を探しに来た先生が
泣いてる私を見て保健室へ連れていってくれたっけ

確かお腹が痛いって言ったんだよね(笑)
子供ながらの精一杯のうそだった


それでもそばに居たくて
何事も無かったように過ごしていたけど
中学受験をさせられそれっきりに

付属中学へ入りエスカレーター式で大学へ

無事元の孤独な人生を取り戻し
エリート街道を登っていくだけだった
そしてどこかの社長と結婚して
ただ生きてくだけの人生だったはずなのに

また陽菜と出会ってしまった

あなたはどこまで私を翻弄すれば気が済むのだろう



入社式は成績順に並んでいたから私は一番前で
陽菜は恐らくうしろ・・・
それに綺麗になりすぎていて全然わからなかったのもある

小嶋陽菜という名前を聞いてどれだけ胸が高鳴ったことか

なのに陽菜は私のことを覚えていなくて
つい意地悪をしてしまった

子供が好きな子にイタズラするかのようにね


そしてあの日の夜

冗談で済ますつもりが酔ってたのもあったし
抵抗しなかったのもあると思う

気づかないふりをしていた欲求を抑えることが出来ず
気持ちをぶつけるかのように抱いてしまって後悔した


いつも私の人生を乱すのは陽菜で
陽菜がそばにいるとそれを修正することが出来ない私の弱さ

でももう離したくないと思った
私は大人で今では自分で自分の人生を決める事が出来るから

だから一緒に住むことを提案した

断られるのを承知で

だって陽菜は私の事を嫌っていると思ってたから

なのに・・・なのに陽菜は来てくれた

どれだけ嬉しかったことか陽菜は知らないだろうな

一緒に生活をするとあの独特なペースに巻き込まれていく
会社ではなんとか私のペースを保つも

一旦家に帰ると陽菜のペースだ

それがなんとも心地良いから困る


そしてやっと私の事を思い出してくれたのは
再会してから約一年後だったのも陽菜のペースなんだろう


そして