「あっツ」

もう九月も終わるというのに
焼けるような日差しに眉間にしわが寄る

「うわっここ圏外じゃん
これだから田舎は嫌なんだよね」

ここに来るのは8年ぶり?

いまだに無人駅で周りには古ぼけた商店が一軒だけ
あの頃と何も変わらない風景はまるで時間が止まっているかのようだ


私が17歳の夏まで暮らしていた村



「優ちゃん」



懐かしい甘ったるい声に振り返ると
こんな田舎に似つかわしくないオシャレなワンピースを着て
日傘をさした美女が立っていた

「・・・にゃん・・にゃん?」

「遅い!(怒)」

「え?」

「どれだけ待ったと思ってるの(怒)」

「いや、でもちゃんと着く時刻言っておいたよね」

「陽菜を待たせるなんて最低!
何様のつもりなの(怒)」


あぁ・・・そっか、そうだった(笑)


「ごめんね、わざわざ迎えに来てくれてありがとう(-∀-`) 」

「べ、べつに御礼が言われたかったわけじゃないし
暑いんだから早く行くよ」


陽菜は私の義理の妹でツンデレちゃんの
恥ずかしがり屋さん

両親の再婚で父親と一緒にここへ来たのが13歳の時
陽菜は7歳だった


「大島優子ですこれから宜しくお願いします」


緊張して挨拶していた時
母親の後ろに隠れ出てこなかった陽菜


「陽菜のお姉ちゃんになるのよ
ちゃんとあいさつしなさい」

「やぁっ」


最初の頃は距離を置かれて遠くから眺めていた陽菜も
中学校と小学校が同じ敷地内にあるから
毎日一緒に通ううちに慣れてきて

にゃんにゃん、優ちゃんと呼び合うようになっていった


「優ちゃん髪の毛して(бвб) 」

「いいよ、そこに座って」


両親二人は、共働きだったからほとんど家には居なくて
私達の面倒は一緒に住んでいた陽菜のお祖母ちゃんが見てくれていて
三人で暮らしているようなものだった

そんなすれ違いの生活が長続きするわけもなく離婚

私は父親について東京へ


まだ小学生だった陽菜に行かないでと泣かれたけど
家族じゃなくなってしまったんだし
私もまだ高校生だったからどうする事も出来ず
離れ離れになってしまった

あれから何の連絡もなかったのに
昨日いきなり携帯にかかって来た陽菜からの電話


「おばあちゃんが倒れて入院した」


切羽詰まった声と面倒を見てくれたお祖母ちゃんだったから
三日間会社に休みをもらいここに来たんだ