「お先」

「あれ?才加今日遅番じゃなかったけ」

「昨日麻里子からメールあって
今日は早番になったからって書いてあったんだ
もしかして優子一人か?」

「さっしーときたりえも帰ったし一人みたい」

「残ろうか?」

「いいよ、後シャンプートリートメントの予約だけだから」

「そっか、近くで飲んでるから
なんかあったらメールして」

「うん、じゃーまた明日」

「おう!」

誰もいなくなった部屋にお客様と二人っきりか・・・
なんか気まずいな(汗)

「カランカラン、こんばんわ」

「え?小嶋さん、どうしたんですか
オーナーなら帰りましたよ」

「予約してあるでしょ(бвб) 」

「お客様って小嶋さんだったんですか(汗)」

「陽菜だってお客だし」

「そうですよね、すいません(汗)
いらっしゃいませこちらのシャンプー台へどうぞ」

一番端の席に誘導して座って貰う

「椅子倒しますね」

こんなに近くで顔見たの初めてかも

いつもはオーナーが全部してるから・・・

麻里ちゃんは毎回この顔を見てるんだ、羨ましいぞこら!

早く波打つ脈を落ち着かせこれはお客様!と自分に言い聞かす


「お湯加減はいかがですか」

「大丈夫です」


綺麗な髪だなー・・・サラサラなのに艶もあって・・・

いつかカットしてみたいなー・・・

はっ、ダメダメシャンプーに集中しなきゃ(汗)

丁寧に、優しく、そして愛をこめて・・・

「かゆい所はございませんか?」

「はい」

「流していきますね」


綺麗な髪を傷めないようにいつもより時間をかけて
優しく、でもしっかり洗い流す


「トリートメントしていきますね」

「お願いします」


言う事にいちいち答えてくれる小嶋さん・・・
嬉しい(´-∀-)

ずっと触っていたいと思ってもいつかは終わりが来るわけで・・・


「お疲れ様でした、椅子起こしますね」


それから鏡の前に案内してドライヤーをかける

何か一つでも小嶋さんの専属になれたらなー
今度麻里ちゃんにお願いしてみようかな・・・

ブラシなんていらないくらいサラサラな髪

「いかがですか?」

自分の髪を触り満足げな顔をして

「ありがとう(бвб) 」

でもすぐに顔が曇る

「あのう・・・気に入りませんか?」

「なんで」

「さっきから顔がなんか怒ってるっていうか
少しだけ唇が尖ってるような・・・
やっぱりオーナーと違うから嫌でしたか・・・」

「違うから!」

「すいません・・・」


なんか余計に怒らせてしまったみたいだ


「お代はいいです、私が払っておきますから」

「やって貰ったんだからちゃんと払う」

「・・・・・」


やっぱり私なんてまだまだで、頼りない子供にしか見えないんだろうな


「今日はもう終わりでしょ」

「はい小嶋さんでラストです」

「ご飯行こう」

「いいんですか?」

「うん」

「すぐ片づけます!」


やったー四回目の食事♪
それも小嶋さんからのお誘いデート(´-∀-)

て、浮かれていたのは私だけで
食事中ほとんど話さない小嶋さん


「あのう・・・やっぱり下手でしたか?」

「上手だったよ」

「じゃーなんで怒ってるんですか」

「だから、怒ってなんて・・・あぁーもう
話あるから私の部屋に行こう」

「へ?」


私の部屋へ誘う前に小嶋さんの部屋へ誘われちゃった?・・・

初めて見る小嶋さんの住んでるマンション

・・・・おっきくて綺麗だ・・・

初めて入る小嶋さんの部屋


「お邪魔します・・・わぁおしゃれ」


流石ブティックのオーナー
私の部屋と全然違う


「そこ座ってて今コーヒー淹れるから」

「あ、手伝います」

「いいから、座ってて」


少し強い口調で言われ


「っ・・はい・・・」


なんか泣きそう・・・この雰囲気はもしかして別れ話?

私が泣いた時外じゃかっこ悪いから家の中でとか?

どうしよう・・・胸が痛くなってきた

明日から生きて行けるだろうか・・・