陽菜


子供の頃から洋服や綺麗なものが好きで
夢は自分のお店を持つ事だった

自分では作れないけど友達をコーディネートしてあげたり
リサイクルショップを回りその子に合った洋服や小物を見つけてきては
教えてあげたりして学生時代は過ごして来た

バイトもそう言う所で働きノウハウを盗み
バイヤーの人達とも仲良くなり
今では小さいながらもやっと自分の城を手に入れた

同じビルの二階で同じ時期にオープンしたサロンのオーナー
麻里子とはすぐに仲良くなり髪は麻里子に任せ洋服は陽菜が見立ててあげる
と言う構図が出来上がってる

オープンの時にもう一人いた美容師さんがいなくなり
替わりに大きい子と小さい子が入って来た

対照的な二人なのに仲が良くて大きい方はクール系で
小さい方は天真爛漫系?
よく笑い笑顔もそうだけど人を和ませる話術も心得ているかのようで
上に行くのが楽しみだった

陽菜を見てヘラッと笑う顔が可愛くて
こっちまで微笑んでしまう

いつの間にか慕われるようになっていて
会うたびに

「今日も綺麗ですね、その服に合ってますね」

とほめてくれる

嫌味に聞こえないから否定もせずいつも有難うと笑って過ごしていた


ある日

「好きです、付き合って下さい!」

て言われ、何の冗談かと思い聞き直そうと思ったけど
あまりにも真剣な顔をしてたから言えなかった

男の人からは何度か告白されて付きあった事あるけど
デートをすればショーウィンドウに飾られてる洋服に目が行き
すぐそこに入ってしまったり、彼、そっちのけで服を見てしまうから

「洋服と付き合えば!」

なんて言われてフラれるのがいつもの事で
やっぱり陽菜の一番は洋服なんだなって思った

今は自分のお店が一番!

だから、大島さんには一番じゃなくてもいいならって
先に伏線を敷いておいた

女の子だけど陽菜も大島さんの事は嫌いじゃないから
一緒に居たら楽しいかなって思ったのに
付き合いだしたら急によそよそしくなった大島さん

陽菜を見ると嬉しそうにハニカミながら話してる時は良かったんだけど
最近は辛そうな顔をするようになった
いつも笑ってるつもりなんだろうけど
出会った時からずっと笑顔を見て来たんだから
違いなんてすぐわかっちゃう

お休みの日が違うからなかなかデートも出来なくて
仕事終わりに何度か食事をしただけ

その貴重な時間もこの前は陽菜の仕事でダメになっちゃったし・・

でも今年の始めに総点検の為全店が休みになるって聞いて
大島さん何か言って来るかな、て思ってたのに
いっこうに言ってこないから仕事入れちゃったら
次の週にメールが来て・・・・

麻里子が知らせてなかったみたい

泣きそうな声で大丈夫ですと言い張る大島さんに
胸がチクンと痛んだんだけど

初めての感覚に何も言う事が出来ずそのまま電話を切った