陽菜


大島さんの様子がおかしい

いつもなら教室に入ると
ずっと陽菜を目で追ってるのが
わかるくらいの視線を感じるのに
今日は何度見ても目が合わないし
当てるとボーとしてたと言うし
元気がない

心配だったけど教室で聞くことはできないから
そのまま準備室へ戻った


「お帰り(*`ω´) 」

「お疲れ、さーて俺も準備しなきゃ」

「一年ですか?」

「あぁ、今年は問題児が多くて困るよ」

「三年生は比較的おとなしい学年ですもんね」

「俺も持ち上がりが良かった(涙)」

「ほら、文句言ってないで準備準備(*`ω´)」

「そういうお前も早くいけよ」

「またまたー、そばにいてて欲しいくせに」

「な、何言ってるんだ(汗)」


そう、麻里ちゃんと野呂先生は付き合っている
もちろん生徒は知らない

何なら婚約までしてるからね

でもなぜだろう聞いた時は胸が全然苦しくなくて
心からおめでとうと言えたの

大学時代から麻里ちゃんの事が好きだったのにね


たまたま入ったサークルの部長をしていて
学部は違ったけど陽菜の事を可愛がってくれて
好きになるのに時間はかからなかった

四回生で引退してからも
二人でショッピングや映画へ
だから全然寂しくなかった

流石に四回生の時は会う回数は減ったけど

就職した高校へ後を追い就任出来て喜んだのもつかの間
麻里ちゃんは同期の秋元先生と付き合っていた

それでも先輩と後輩は変わらないわけで
学生の時のように気にかけてくれていて

一年ほどして秋元先生と別れたと聞き
どんなに嬉しかった事か・・・

それからかな
自分の教科には準備室がないからって
理科準備室に息抜きしに来るようになり
年上なのにおっちょこちょいの野呂先生の事を
可愛いと言いはじめ・・・・

いつの間にか二人は付き合っていて
婚約したと聞いたのが文化祭の数日前

だからと言って好きな事には変わりないけど
好きの意味が変って来てたのかもしれない




三・四時間目の授業が終わり
準備室へ戻ると二人はすでに
お弁当を食べ終わっていた


「早い(бвб) 」

「ほら、お昼はゆっぴーが来るから
何かと面倒でしょう」


そりゃー麻里ちゃんが作って来たお弁当を
二人で食べてたら誰だっておかしいと思うよね


でもその心配は無かったみたい
だって大島さんは準備室へ来なかったから



「文化祭終わって忙しくなくなったのに
ゆっぴー何で来ないの?」

「知らない」


ちゃんとコップを用意して待ってるのに
あれから週をまたいでしまっていた


もちろん授業中も大人しくなっていて
実験中もどこにいるのかわからないほど大人しくて

心配していたのに

他のクラスの授業終わり廊下を歩いていると
懐かしい笑い声が聞こえてきて

教室の中を見ると
あの笑顔で笑っている大島さんがいて・・

なんでかな
急に胸が苦しくなった