あの陽菜がこんなに泣くなんて思ってもいなくて

触れようとしたらそれを守る様にけむしが威嚇してきた


「シャアァッァァ!!」

「危害を加えようとしてるんじゃないから落ち着いて(汗)」


猫にそんな事を言っても分かるはずが無いのに
何てんぱってるんだろう私

いや、けむしは普通の猫じゃないか・・・・


「ごめん・・・・とりあえずソアーまで行こう・・・一人で歩ける?」


何も言わず首を横にふる陽菜


「けむし様、落ち着いて
これは陽菜を助けるために触るだけだから・・・ね」


そう言ってから陽菜の肩にそっと触れるけど
何もしてこないから分かってくれたんだと思う


ゆっくり立たせて支えながらソファーへ
その間陽菜はずっと顔を手で覆っていた


「紅茶でも入れるね」

「カフェオレ」

「あ、カフェオレだねわかった(汗)」


こういう所はいつもの陽菜だなって思う


「はいどうぞ、冷めないうちに飲んで」


陽菜の分はテーブルに置き自分の分は手で持ってじっと中を見つめながら


「もしさ、心につっかえてる事があるなら
この際だから全部掃き出してみない?
私で良かったら聞くよ」

「泣かせた張本人のくせに・・・・」

「そうだった(;´-∀-)
でもああでもしなきゃ麻里ちゃんさんの事言い出せなかったでしょ」

「別に言わないでも済んだ」

「でも、引きこもりの原因なんでしょ?
峯岸室長は知ってるの?」

「陽菜のプライバシーなんだから言わないし」

「だったら私はほら、陽菜とは何の関係もない
しがないいち社員だし、話を聞いたところで何の影響もないと思うから
あそこまで言ったんだから全部話してスッキリしちゃいなよ」

「全部聞いても出て行かない?」

「あ、うん・・・・その事では出て行かないかな(;´-∀-)」

「どの事だと出て行くの(怒)」

「休みをくれないとか、理不尽な事を言われたりとか?」

「なんか有利に立とうとしてる」

「そんな事無いって(;´-∀-)」

「絶対誰にも言わないでよ」

「うん、約束(-∀-`) 」


それからゆっくりと話し始めた陽菜


「麻里子とは学生時代同級生だったの」

「友達だったんだ」

「お互い好きな事が似ていて
すぐ意気投合して恋人関係になるのに時間はかからなかった」


そんな前から付き合ってたんだ


「陽菜はどちらかと言うと企画やデザインを考えるのが好きで
毎日スケッチブックに絵をかいては麻里子に見せて
それに模様を付け加えたり少し手直しするのを麻里子が得意としていて
二人で一つだねって言い合ってた」


ベースは陽菜が考えていたのか・・・


「なんとなくSNSに載せたデザインが拡散され
それを買いたいという人たちが現れあっという間に
高校生で起業することになりネットに強かった陽菜は社長で
麻里子は営業能力が高かったから副社長兼営業でやってた
大学生になった時にはいろんなつながりや人材も増え
自分達で服を全部作るようになりあのビルを買ったの」


「ちょっと待って・・・・いま社長になったって言ったよね
もしかして陽菜って小嶋社長なの!?」

「そう、小嶋陽菜
優子の会社の社長だけど今までの粗相には目をつむってあげる」

「あ、ありがとう・・・ございます(;´-∀-)」


デザイナーだとは思ってたけどまさか社長様だったとは(;´-∀-)
私、クビにされてもおかしくない事言ってたかもしれない・・・
どころか呼び捨てにしてるし、叱ったりもしてた(;´-∀-)


「続き話してもいい?」

「は、はい」


「でね、私達は上手くいってた・・・ううんいってると思ってた
仕事もプライベートも充実していたし
麻里子は凄く優しくて陽菜の我儘を何でも聞いてくれたから
不満なんて全然なかったし本当に愛してた」


ある意味凄いよね麻里子さん


「でも半年ほど前、世界でも有名なブランドからオファーが来て
寝る間も惜しんでデザインを考えていたから
二人の時間がなかなか取れなくなって
同じベッドに寝てはいてもすれ違いの毎日だったから
セックスもだんだんしなくなっていて・・・
キスだって陽菜が求めないとしてくれなくなってたの

でも考えてる間は凄く楽しくて全然苦じゃ無かったんだ
描き上げた時いつものように麻里子に見せたの
凄いよ陽菜って抱きしめてくれて
これでまたあの頃のように戻れるって悦んだ

で、いつものように麻里子が完成させるんだと思って待ってたら
数日後その会社から今回は違う所に決まったからって連絡が来て
まだデザインも見せてないのにって言うと
とっくに見せてもらってたって言われて
不採用で戻ってきたデザインは陽菜が考えたのじゃなくて
決まったデザインが陽菜のデザインだった」


「それって・・・・」


「麻里子が裏切ってたの
その時には自分の会社をひそかに立ち上げ
社員も腕のいい子ばかりを引き抜いていて
陽菜を捨てて出て行った」


「まじか・・・・最低だ(怒)」

「信じていたから全然気づかなくて
まあ、会社の経営を全部麻里子に
任せてたのもいけなかったんだろうけど
去られて初めて気が付いたの・・・」


それで人を信じられなくなって引きこもりになってたのか


「ホテルで会った時男の子といたの覚えてる?」

「後ろに立ってた若い子だよね」

「そう、結構有望株で陽菜も色々教えてあげてたのに
よりにもよってその子と浮気してた!」

「え、男・・・と?」

「酷いと思わない、やっぱり男がいいって
わざわざ最後に言って出て行ったんだよ」

「酷い・・・・辛かったね陽菜(。-∀-)」


仕事で裏切られた上にプライベートまで・・・
それも今までを否定するかのような裏切り
陽菜が可愛そうだ(泣)


「ツゥ・・・優子が泣く事無いでしょ」

「だって陽菜が可愛そうだよ
私だったら耐えられない・・・・
だから引きこもっちゃったんだね
理由も知らないのに酷い事言ってごめん
私も最低だ」

「ちがう、優子は悪くない
言わないで意固地になってた陽菜が悪いんだから」

「うぅうぅぅ・・・にゃんにゃん(。-∀-)」


気が付いたら抱きしめていた・・・と言うか抱き合っていた


「優ちゃん・・・・(泣)」


「よし、今日は二人で飲み明かそう
ほら、あいつの悪口どんどん言っていいよ
私が聞いてあげるから」

「うん、優ちゃん有難う」

「お酒のあて作るから先にお風呂入ってきなよ
そしたらそのまま寝れるでしょ」

「うん(бвб)」


素直なにゃんにゃんを可愛いなって思ってしまった

ずっと素直だったらいいのにね(-∀-`)