学園祭前日のリハは衣装を着て行われた

全員じゃなく一人を除いてだけど


「すごかったね」

「うん、感動した」


雑用係の一年生五人は正面から見せてもらえた
本番は裏方に回らないといけないから


みんな上手くて・・・

特に主役、準主役の二人が最高で・・・・

あの衣装を着て演じたらどうなるんだろうか・・・・

明日はビデオを持ってきて誰かに撮ってもらおう


「お疲れ様でした(-∀-`)」

「衣装クシャクシャにならないように気をつけて」

「はい」


先輩たちが脱いだ衣装を丁寧にハンガーに掛け
吊るしていく

一番端には布がかけられ”触るな”の張り紙の後ろに
小嶋さんのマークが描かれていて
これが意外に可愛いからびっくり

こういう絵も描くんだ・・・なーんて感心したっけ

私とたかみなそして小嶋さんと篠田さんしか知らない衣装

明日みんながどんな反応を示すのかが楽しみで仕方がない

最初で最後の舞台
私は出ないけど頑張った証はみんなの目に残るから
それだけで満足


帰る前に全員で集合



「明日は今日以上の演技をしよう」

「はい!」



秋元さんの掛け声にみんなで答える



その夜はなかなか寝付けなかった

楽しみなのもあるけど、明日で最後だって言う事を考えたら
今までのことが頭をめぐり
思い出したくないあの出来事まで思い出しちゃって・・・
全然眠れなくなりいつの間にか朝が来ていた



「優ちゃんなした」

「ちょっと、眠れなくて・・・・」

「準備はうちらでやるから少しでも寝たら」

「アハッありがとう、でも一晩くらい寝なくても若いんだから大丈夫」


雑用が終わると今度はフィッティングの手伝い

自分で簡単に着れる衣装の人もいるし
手伝ってもらわないと着れない人もいる

小嶋さんもその1人で
一番最後に着替えるらしい


「たかみなこれキツイ(∵)」

「朝食べすぎないでくださいって言ったのに(汗)」

「私にしねっていうの(怒)」

「お、大げさや(汗)」


いつの間にか幼馴染というのがバレていて
たかみなも開き直り言い返すようになった
ほんの少しだけど(笑)


佐江曰く、前田さんがたかみなにお昼ご飯を奢らせようとしていて
持ち合わせがなかったたかみなに変わって出そうとしたら
一年生に奢ってもらう訳にはいかないって言うから
たかみなも一年生ですよと言ったら
こいつは幼馴染だから良いのって
私以外の一年生の前で言ったらしい

その頃私は部室でせっせと衣装を縫っていた
もちろん小嶋さんのを


全員着替えて後は小嶋さんだけ

衣装を先に運び入れ


「用意出来ました」


無言でフィッティングルームへ入る小嶋さん
その後から手伝いに入って行く篠田さん


「麻里ちゃんはいい」

「え、誰に手伝ってもらうの?」

「作った人がするべきでしょ」

「わ、私ですか(汗)いや、私は・・・・」


ドレスを着るにはブラを取らなければいけない
その為に衣装にパッドを縫い付けているんだから

だからショーツ一枚の姿になるわけで(汗)
言い訳を考えていたら


「早くしないと間に合わないでしょ(怒)」


また怒らせてしまった

「ゆっぴー頼むね、このお嬢様はへそを曲げると
帰るって言いかねないから」

「はい・・・・」


頑張れ優子、これが最後の奉仕・・・・
そう、これが終われば小嶋さんとはもう話も出来なくなるし
会えなくなるんだから・・・


中へ入ると目の前には大きな姿見があって
二、三人は着替えれるスペースがある
そこに小嶋さんと私の二人だけ

まあ、外にはみんないるんだけど・・・

どんどん脱いでいく小嶋さん、見とれる私

またあの場面を思い出してしまって頭をブンブン横に振る



「何してるの、早くドレスとって」

「はい」


ドレスをハンガーから外し型崩れしないように下に置き
入るスペースを空ける


「どうぞ」


なるべく鏡と体を見ないように
ドレスだけをじっと見つめて着付けて行く

私の方が背が低いからチャックをあげ留め金をかけるのも一苦労

ふぅ・・・・出来た

ふと視線を前に向け鏡を見たら
この前よりも綺麗な小嶋さんがいてボーと見つめていた

多分ヘアーとメイクをしてるからだと思う
このドレスが似合うのは世界にたった一人
小嶋さんだけだろう
そのドレスを私が作っただなんて・・・
一生の思い出が出来た


「へん?」

「へぇっ?」

「ジーと見てるからおかしいのかなって」

「いえ・・・綺麗で見とれてました(-∀-`) 」


自然と本心が口から出たのはあまりにも美しいから


小嶋さんが少し照れたように見えたのは気のせいかな


「カーテン開けて」

「はい・・・・皆さんお待たせしました」


そう言って一気にカーテンを開ける


「おぉぉぉ!!」

「わぁぁぁぁ」

「篠田王子様で良かった(*`ω´) 」


佐江なんて口をポカンと開け放心状態で見てるし(笑)


「よし、全員揃ったところで円陣組むよ」


一年生の所へ戻ろうとしたら腕を掴まれ
小嶋さんと篠田さんの間に入れられた

この二人の間に入ると自分がみすぼらしく見える
それに真っ黒の衣装を着てるしまるで影
そうだよ、私は誰にも気づかれない影だ
こんな華やかな場所にいる事態おかしい
そう言葉じゃなくて態度で示してくれたんですね

やっぱり小嶋さんは私の事が嫌いだったんだ