公演前日の夜


陽菜がお風呂からあがるとちょうど
誰かから電話がかかってきて部屋を出ていった優子

たぶんたかみなだと思う

そして玄関から出ていく音がした


キスシーンは今日のリハでもしなかった
一応顔を傾けする仕草だけ


それでも真っ赤になってるんだから本番は大丈夫かな


ふと目についた上着

外寒いのに風引いてたらどうするの
昔から引きやすいって言ってたのに・・・・

出ていってから10分・・・


「はぁ・・・・もう(怒)」


立ち上がろうとしたら玄関の閉まる音が聞こえたから
何事もなかったかのようにスマホをいじる

何故かそっと入ってきた優子に


「風引いて舞台に穴あけないでよね
それと家の中で出来ない電話はしないでほしいんだけど」


陽菜の前で言えない話なんてしないでほしいのは本音


「すみませんでした・・・」


シュンとしてまたすぐ落ち込む
このまま陽菜がここにいると
気を使うだろうから



「明日早いからもう寝る」


そう言って立ち上がると


「私もお風呂入ったらすぐ寝ます」


準備していた着替えを持ってお風呂場へ走っていった


本当は眠くない
だってまだ22時だよお子様が寝る時間じゃん


でもテレビを消し自分の部屋へ

ベッドに入りスマホゲームをしていると
階段を上がってくる音がしたから慌てて寝たふりをする

ドアを開けると、ふーと息を吐き中へ入ってくる優子
電気を消し音を立てないようにそっとベッドに入ってきて
今度は、はぁーとため息

本人は気づいてないんだろうけど
今日何度ため息をついてるか・・・

初舞台だから緊張するのはわかるけど・・・

いつものように方向を変え抱きまくらのように抱きつくと
一瞬ビクって体を震わせるから


「大丈夫だから」


そう囁いて無意識に背中を撫でていた

そしたらありえないことが起こる


「ありがとう陽菜ちゃん」


消え入りそうな声でそう囁くと
それに似つかわしくない力で
ギュッと抱きしめ返してきた優ちゃんが愛おしくなり

頭にキスを落としていた



何してるんだろう陽菜・・・・

この気持は何?

それにこうして抱きしめていると安心というか・・・


今まで誰といても埋められなかった虚無感を
このごろ感じなくなったのは関係あるのかも

もしかして陽菜・・・・・本気なの?

こんな自分に自信のない背の低いチビに?


自信をつけさせて変わらせてあげようとは思ってたけど
陽菜自信も変わらされてたって事?


陽菜の腕の中でスースーと寝息を立て
気持ちよさそうに安心して眠る優子に?


緊張してたくせに
陽菜より先に寝てしまった優子に少しムッとして


寝てる優子に予行練習をしたのは内緒