9年ぶりにこの町へ戻って来た

生まれ育った町

でもお父さんの転勤で家族で引っ越す事になって
誰にも何も言わずに出て行ったからかなー

それに会いたくない人たちもいる

住む場所が違うし駅も違うから会わないだろうと思っていたのに・・・


「明日からよろしくね大島さん」

「はい」

「少し騒がしいかもしれないけどいい所だからすぐ慣れると思うわ」

「騒がしい?」

「聞いてない?うちの学校に芸能人の子が二人も通ってるのよ
一人は子役から見事転身をして
演技派女優として売り出し中の篠田麻里子さん
もう一人は最近アイドルとしてデビューした小嶋陽菜さん
知ってるかしら?」

「嫌というほど・・・」

「え?」

「いえ、なにも・・・」


「全然タイプの違う二人だからそれぞれのファン層も違って
喧嘩はないんだけど学校に来るだけで騒がれてるから大変そうよ」


「私は興味ないので大丈夫です」

「そう・・・大島さんは編入テストの成績も良かったし
前の学校ではまじめだったと聞いてるから
これからも期待してるわね」

「はい、頑張ります」



同じ学校だというのは合格して家も決まり
引っ越す三日前に知った

前の学校の友達が転入先の学校名を聞いて騒いだから気が付いたんだけど
遅すぎて変える事が出来なかった

だから見つからないように伊達メガネをかけ
前髪をおろしガリ勉風に変装してる


まあ、小学生の時以来会ってないから忘れてるかもだし
私だって変わってるから
普通にしていても気づかれないだろうとは思うけどね


早く家へ戻って部屋の荷物を片付けなきゃ


(はい、わかりました二時間目で帰るようにします)

角に差し掛かった時声が聞こえたけど
気にせず進もうとしたら目の前に・・・・


にゃんにゃん・・・・

大好きだけど一番逢いたくなかった子



一瞬見入ってしまい目が合った

でもすぐ逸らせたのに


「ゆう・・・ちゃん?」

「ちが・・・・」


バチン!!

言い終わる前に頬を叩かれていた


「へぇ?」


「何も言わずいきなりいなくなって
今まで何の連絡もないとかあり得ないんだけど(怒)!」


みなさんこれがデビューしてまだ一年もたたない、
純情派アイドルとして売り出し中のこじはるの本性です


「理由を洗いざらい話してもらうから覚悟してよ(怒)」

「私は話す事なんて無いです、芸能人とは関わり合いたくないので」

「なんで、優ちゃんがそんな事を言うの
一緒にてっぺん取ろうって約束したじゃん」

「知らないそれに私は一般人だから」

「そっか・・・・・」


髪が一段と伸びてテレビで見るよりすうだん可愛いけど
暴力的で口が悪いのは昔と変わってなくて泣きそう
でももう関わらないって決めたからごめんねにゃんにゃん



そう思ったのに・・・・



どうして私はこんな所にいるんだろう


「忘れてるとしても急にいなくなったのは本当だから
今日はバツとして陽菜のマネージャーをする事」


そして私も変わってない
陽菜の言う事は断れないんだよね、昔から


「今日は初めてのCM撮影なんだけど
マネージャーが他のタレントさんに付かなくちゃいけなくて
ここに来れないって言われたの
陽菜まだ駆け出しでしょ、だからどうしても後回しになっちゃうの」

そう言いながら これ、誓約書と企画書ねって渡された


・・・・・下着のCM

「ねえ、いきなり下着になっても大丈夫なの?
陽菜って清純派アイドルだよね」

「水着も下着も同じでしょ?ほら」


そう言って見せられたのは某雑誌の表紙


「グラビアアイドルなの?(汗)」


え、でも女優になりたいって・・・


「今はグラドルでアイドルだけど
これを糧にいろんな人と知り合って演技も磨き
絶対に女優になってやるんだから(бвб) 」


そう言い終わるとトイレに行ってくると言って部屋を出て行った

・・・・やっぱり変わってない
逞しいというか強いというか・・・にゃんにゃんだなー


五分以上待っても戻ってこないから探しに言ってみると

非常階段みたいなところにいて何やらブツブツ呟いていて
少し震えてるように見えた


「にゃんにゃ・・・」

(大丈夫、陽菜なら出来る、下着なんて水着じゃん
触られるわけじゃないし触れられるだけだから・・・・)


口は悪いけど実は弱虫
陽菜の強がりは弱さの裏返しだって知ってる

だから


「元気出してにゃんにゃん
にゃんにゃんが元気ないと私も悲しい」


持っていたハンカチでうさぎを作り
目の前で腹話術


「・・・・・・・」

「アハッそこは笑って馬鹿って叩いてよ(汗)」

「陽菜が弱ってる時いつも一番に来てくれるのは優ちゃんだった
学校で会った時変わっちゃったって思ったけど
変わってなかった・・・優しくて可愛い優ちゃんのままだね」


陽菜はいつだってそうだった
意気地なしで冴えない私を
可愛いって言ってくれた

守れない約束を忘れたふりしてる最低な私を
優しいだなんて言ってくれる陽菜

うれしいけどごめんね・・・私にはその資格がないんだ