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頑張った向こうには 10

陽菜


明日お母さんの大切な人とその娘さんに会わせたいから
いつものお店に7時までに来ておいてね

いきなりそう言われてハイそうですかと行けるわけがない

だから急患が入ったと嘘をついて病院の部屋に居た


私が中学三年生のとき医院長だったお父さんが亡くなり
副院長だったお母さんが医院長になった

今まで以上に忙しい日々を送っているお母さんを助けてあげたいと思って
医師を目指し子供が大好きだった私は小児科医になった

まだ駆け出しだから忙しくて家に帰らないことが多い
病院にいるほうが勉強になるし何かあったらすぐ見てあげれるから


病院の娘だということを大いに利用して
新米医師なのに個室をもらいそこで寝泊まりする日々

それでもお母さんのために週2・3日は帰っていたのに
いきなり大切な人が出来たから会えと言われて
会えるほど陽菜は大人になりきれてなかったみたい

なのにすぐ一緒に住みだし一人っ子だった陽菜に妹が一人出来た



まだ気持ちの整理ができていなかったし
本当に忙しいのもあって今まで以上に家に帰らなくなっていた



めぐみさんはもともと患者さんだったし
たまに病院に来ていたから顔は知っていた
でも仲のいい友達なんだと思っていた

結婚式の日初めて妹になる娘を紹介されたとき
高校3年生だと聞いていたのに小さくて中学生くらいに見えた

「はじめまして大島優子です」

瞳は大きくて薄茶色のクリクリした目
ニカッと微笑んだ両頬にできるエクボ
少し出た大きめな前歯

極めつけは

「お姉ちゃん」と呼ぶ少ししゃがれた声に
陽菜の心臓はこれでもかっていうくらい早く打ち付ける

バレないようにポーカーフェイスでよろしく、と言うのが
精一杯だった

だって陽菜は・・・・・



保育園の頃毎日男の子からいじめられていた
スカートめくられたり
先生に可愛く髪の毛を三つ編みしてもらっても
すぐくちゃくちゃにされたり
泥を投げつけられたり・・・

今なら小さい子が好きな子にするいたずらだったとわかるけど
あの当時は本当に嫌で保育園に行きたくないとよく駄々をこねていた

だから男の子のことが大っ嫌いになって
好きになるのはいつも女の子だった

でも、陽菜は一人っ子で病院の跡継ぎを産まないといけない

これでも学生の頃はモテたから男性とも付き合ったけど
やっぱり無理だった・・・
触れられるだけで鳥肌が立つし
キスをされたときなんて吐きげがした




式が終わり二人っきりになった時
マシンガンのように話しかけて来る彼女

身振り手振りですごく楽しそうに話す姿を見て
自分に言い聞かす

(彼女は妹、駄目だよ陽菜)

これ以上関わると自分を保てなくなる
彼女にはなんの罪もないけど一線を置くために
強い口調で言い返すと
眉をハの字に下げ必死に笑顔を作ってるのがわかった
その笑顔の中に悲しさが見え
それにキュンとしてる自分に笑いそうになる

これから毎日家にいるんだよね・・・・・自信ない
だから今まで以上に家に帰らず
帰っても寝るだけで朝会わない時間に出かけてたのに

こっちの気も知らないでお弁当を作り病院に持ってくる彼女
あんなことするつもりはなかったけど下に落ちてしまった(汗)

おかずを拾う背中を見ながら心を鬼にして
もう二度とこないようにきつく言ったはずなのに・・・

健気にお弁当を運ぶ彼女に根負けして
蓋を開けてしまったのが間違いだった・・・

これ、彼女が作ってるの?めぐみさんじゃなくて?

感心していたら腕が伸びてきてあっという間にプチトマトを取られた

「ちょっと、やめてよ(怒)」

「美味しそうじゃん、いらないなら食べていい?」

「だめ!て言うか勝手に入ってこないでよね(怒)」

「はいはいわかりましたよー」

出ていったのを確認して蓋を締めもとに戻しておいた

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