いつもならすぐ出てくれるのに
何回目の呼び出し音だろう・・・・


「はい・・・・」

「陽菜です」

「うん」


陽菜ですって言わなくても着信画面に出てたはずだからわかってると思う


「今電話大丈夫ですか」

「外に出てきたから大丈夫」


だから出るまでに時間がかかったのか


「えーと・・・・元気ですか」

「私は元気だよ、にゃんにゃんは?」

「私も元気です」


違うじゃん、こんな事話すために電話したんじゃないけど
どうやって切り出したらいいのかわかんない


「松井さんだっけ?」

「は、はい」


優子先輩から切り出してきたから焦った


「記録伸びてるらしいね」

「どうして知ってるんですか」

「あっちゃんが教えてくれたから・・・」

「珠理・・・・松井さんだけじゃなくて
他の子も伸びてます」

「そっか・・・・」

「今日松井さんとパンケーキ食べに行ったんですけど
みんな誘ったんですけど用事があるって言われて
でもいいよって言っちゃったから断れなくて・・・・
ごめんなさい」

「後輩なんだからいいんじゃない」

「え?」

(優子まだー)

「今行きます
ごめん今先輩にマッサージしてる途中だから切るね」

「え・・・ゆう・・・(ピッ)・・・・」


怒ってるじゃん・・・・
もうやだ、知らないんだから!






「小嶋さん帰りましょ」

「ちょっと待ってこれだけやっちゃうから」

「はーい♪」


相変わらず珠理ちゃんは私を慕ってくれるし
引っ付いてくるから可愛くないわけがない


「陽菜、珠理奈と仲良すぎじゃない」

「そっかな、ほかの子が来ないからだと思うよ
来たら同じように接するもん」

「行きたくても常に珠理奈が隣にいるから行きにくいんじゃない?」

「そんな事無いでしょ、同じ一年生どうしなのに」

「大島先輩が知ったら怒られるよ」

「知らない、もう陽菜に興味ないみたいだし」

「そんな事無いでしょ(汗)」

「そんな事あるの!
ここにいない人の話はもういいから」



あの日の夜、オヤスミのLINEが来なくて
朝は陽菜から送ったから来たけど
優子先輩からは来なくなった

やつぱり遠距離恋愛なんて無理だったんだ

寂しさを紛らわすために珠理ちゃんを受け入れた

と言っても付き合ってるわけじゃないけど・・・

だって別れようって言われてないから・・・
それで付き合ったら浮気になっちゃうでしょ





「小嶋さん、明日のお休み遊びに行こうよ」

「う〜ん、それは出来ないかな」

「なんで、いいじゃん」

「珠理ちゃんは後輩だから特別扱いしてるって思われちゃうでしょ
クラブからの帰りならいいけど
クラブ以外で会うのはヤッパリダメだから」

「でも優子先輩とは付き合ってたんでしょ」

「それは・・・・・優子先輩が引退されてからだよ」


そんな話をしていたら当時の事を思いだしちゃった

あの頃はお互い勘違いしていて・・・
好き同士だったって分かった時嬉しかったなー

優子先輩の緊張してる顔とか・・・嬉しそうな顔とか・・・

ヤバ・・・


「小嶋さんどうしたの(汗)」

「何でもない・・・・」

「何でもない事ないじゃん泣いてるんだよ(汗)」

「何でもないから向うへ行って(涙)」


どんどん溢れ出て来る涙を止めることが出来なくて
珠理ちゃんにきつく言ってしまったのに


「泣かないで、私がいるじゃん」


そう言って後ろから抱きしめられてるのに
優子先輩じゃない腕と
優子先輩じゃない匂いに

どうしようもなく寂しくなった