最終日テストが終わると同時に教室を飛び出す

陸上部だけその日はホームルームが免除されていて
急いで会場が有る県に向かうんだけど

準決勝は2時からで
決勝は4時半頃らしい

もちろん2時には間に合わないけど
決勝はこのまま道路が混まなければ30分前に着く予定

予選は余裕で勝ち上がってる先輩二人

絶対に決勝まで残ってくれるはずだから
みんな信じようと二年生の先輩がバスの中で声をかける

当たり前じゃん
だって陽菜に金メダルくれるって言ったんだから・・・
夢じゃなければだけど・・・

二時過ぎ他の競技で出場していた秋元先輩から
二人共準決勝を突破したよと連絡が入り
みんなで歓喜した


このまま順調に行けば4時には着きますね

という運転手さんに安心していたら
高速を降りてからの下道が渋滞・・・

ありえないんだけど(怒)

4時が過ぎ・・・10分・・・15分・・・

「まだまだですか?」

しびれを切らした先輩が聞くと

「後5分で着くと思います」

「みんな、バス降りたら走るけど怪我しないようにね」

「はい」

陽菜走れるかな・・・(汗)
怪我は治ったけど階段駆け上がる自信ない(涙)


運転手さんが駐車場じゃなく入口付近に止めて降ろしてくれたから
少し近くなった

「みんな行くよ」

そう言って走り出すけどやっぱり陽菜は
運動してないからどんどん離されるわけで・・・

「陽菜頑張って」

「はぁはぁ・・・先に行って」

「何言ってるの優子先輩見るんでしょ、ほら頑張って」

そう言って戻ってきて手を引っ張ってくれる一年生に
涙が出そうになった

階段でも後ろから押してくれて
最後には両脇から抱えられて
陽菜は足を曲げてるだけで到着

「はぁはぁ・・みんなありがとう(涙)」

「ほら、泣いてる場合じゃないでしょ
しっかり応援しなくちゃ」

「うん」


中学では帰宅部で何かで繋がってる仲間なんて居なかった

優子先輩が居たから陽菜にも大切な仲間が出来ました
きっと一生繋がっていくんだと思う・・・

優子先輩を好きになってよかった



「何してるの早くおいで」

二年生にまた怒られたけど気にしない

前に行きみんなで声を出す

「優子先輩、山本先輩、ガンバ」

陽菜もみんなに負けないように声をだすけど
どうしても消えちゃう・・・

なのにこっちを見て少し手を上げてくれたのは
思い上がりかな

もちろんみんなにだと思うけど
目があったと思う・・・たぶん・・・・

そしてスタートラインに立つ先輩の顔が変わった

なんてカッコイイんだろう・・
普段の可愛い顔も好きだけどこの真剣な顔も好き

ちょっと変な顔も好き

まあ、全部好きなんだけどね(бвб)


スタートの合図とともに得意のロケットスタートをする先輩

先頭に立ったまま・・・

「優子先輩頑張れぇー」

山本先輩もいるのに・・・マネージャーとしては失格だけど
これだけは譲れないもん

あっという間に駆け抜けた100メートル

映し出される電光掲示板の一番上に大島優子という名前と
二番目には山本彩という名前

そして

「ただいまの100メートル走で大会新記録が出ました」

流れたアナウンスに騒ぐ仲間たちの前に
二人で肩を抱き合いながら挨拶に来てくれた先輩を見ていたら
涙が止まらなかった


その夜は国体メンバーの先輩たちと合流して同じ旅館に泊まり
夕食では二人のお祝いをした

「やっぱり優子ちゃんには勝たれへんかったわ」

「さや姉が後ろから迫ってくるのが分かってたから
より早く逃げれたんだと思う
だから記録はさや姉のおかげだよ」

「何言ってるん優子ちゃんが早いだけやん」

「まあまあ、二人がすごいのはわかったから
褒め合うのはその辺にしてくれるかな」

「才加も明日は頑張れよ」

「お、おう(汗)」

「こんなデカイ図体して上がり症だなんで笑っちゃうよな」

「うるさいよ、体のデカさは関係ないだろ
優子と違って心は繊細なんだから」

「よく言うよね、佐江もなんとか言ってやってよ」

「さ、佐江も明日から始まるから今日はもう寝ようかな」

「早すぎるだろうが(笑)
ご飯もしっかり食べとかないと力でないぞ」

「だよね、食べる・・・うん、うまぁー♪」


先輩たちのやり取りを見ていたら自然と微笑んでしまっていたみたいで


「陽菜顔やばいよ」

「え?」

「あんまり見つめてたらまた言われちゃうよ」

小声で指摘してくれる同級生

そうだよ、二年生も居るんだった(汗)

ちらっと見たらこっちを見て睨んでるようにも見えて
慌てて違う話をふる

「みんな今日は助けてくれてありがとう」

「え、何もしてないよ」

「引っ張ってくれたり抱えてくれたりしたじゃん」

「あぁ、あんな当たり前のこと?
陽菜はマネージャーなんだから体力無いの当たり前でしょ
だから気にしなくていいよ
それにいつも1人で頑張ってくれてるから
その御礼も兼ねてね(笑)」

そう言ってウインクしてくれる同級生

「っ・・・ありがとう・・・」

「ちょっと、泣かないでよ(汗)
いじめてるみたいじゃん」

「だって嬉しいんだもん
こんなに優しい友達初めてなんだもん」

「もう・・・(笑)三年間、後二年間だけど
最後までよろしくね」

「うん」


これで辞められなくなっちゃったけど
それもいいかなって思ったから返事しちゃった

みんなとハグして一緒にお風呂に入って
同じ部屋で布団を敷いて寝ようと思ったら
LINEを知らせる音色に画面を見ると
優子先輩からだった

(いい仲間に恵まれたね)

《はい》

見てくれてたんだ

(私リレーに選ばれちゃってまた走ることになったんだ)

すごい!東京都代表じゃん

《おめでとうございます》

でも陽菜達はたぶん日曜日には帰ると思う
月曜から授業あるし
応援団は帰るって言ってたから宿泊取ってないと思うし

最後まで見たかったなー・・・・

(にゃんにゃんはマネージャーだから居てくれるよね)


え!?・・・・反対に居ても良いんですか?


《いたいです!でも1人だけ残れないです部屋も取ってないし》

(私達の部屋広いから後二人寝れるよ)


うそ・・・うれしい

(私から先生に言っておくから)

《はいよろしくお願いします》



でも最終日は火曜だけど選手でもないのに大丈夫かな・・・


「陽菜何か良いことあったの?」

「え?あ・・・うん・・・・ちょっとね」

「なになに、私達に言えないこと」

「先生に言わないといけないからそれから言う」

「どうせ優子先輩関係でしょ」

「(бвб)」

「うわっ、図星(笑)」

「多分明日の朝食の時に聞くと思うから
陽菜の口からは言えない・・・ごめんね」

「いいよ、マネージャーは公平じゃないとね(笑)」


公平じゃないかもだけど・・・・(汗)

その日の夜、優子先輩がゴールテープを切って
陽菜に向かって突進してきて抱きしめられるという夢を見た